自律的なキャリア形成の武器としてMBAが人気を集めています。
日本ではMBAを「資格」と誤解している方も多く、MBAがどういうものなのか意外と知られていません。
この記事では、是非知っておきたいMBAの二つのコア要素(人材教育・第三者認証)について丁寧に解説させて頂きます。

1. 社会ニーズから生まれたMBA
時々誤解している方もいらっしゃるようですが、MBAは「資格」ではなく「学位」で、日本の修士課程にあたります。
日本ではあまり知られていませんが、MBAは社会のニーズから生まれた教育プログラムなのです。
これがMBAのコア要素の一つ目です。
この点をしっかり理解していると、社会ー自分ーMBAのリンクが明確になり、出願エッセイの”Why MBA?”がぐんと書きやすくなると思います。
・MBA誕生のきっかけは急速な工業化
世界で最初のMBAプログラムが生まれたのは、1900年初頭のアメリカ。
当時のアメリカは、急激な工業化とグローバリゼーションの真っただ中でした。
自動車メーカーのフォードが工場内にベルトコンベアを導入するなどして、世界で初めて自動車の大量生産を始めたのもこの頃です。

人々の生活も豊かになり、あらゆる産業が急速に成長・拡大しました。
ですがそのあおりを受けて、ビジネスの各機能は複雑化し、経営の難易度は飛躍的に上がりました。
・高度マネジメント人材へのニーズ
そこで社会や産業界は、ファイナンスやマネジメントをきちんと学び、グローバルビジネスを包括的にマネジメントできる高度人材を強く求めるようになりました。
ビジネスで次々と発生するありとあらゆる課題に対峙し、適切な判断を下しながら進んでいく、そんな人材を育てるためにできたのがMBAです。
そのコンセプトはざっくりまとめると以下のようになります。
- マネジメントの必須スキル・知識をパッケージで学べること
- 現場で活かせる問題解決力の養成を主眼としていること
・世界初のMBA
世界初のMBA課程は、1908年にハーバード大学経営大学院(現在のハーバード・ビジネス・スクール)で創設されました。
当時は、学生80名に対し教員15名という布陣でした。

当初から経営課題に対する解決能力を養うことが最大のミッションであり、1924年にはケーススタディを用いた「ケースメソッド」が開発されました。
・全米から全世界へ
その後、1925年スタンフォード大学にもMBAプログラムができると、ビジネス教育としてのMBAはあっという間に全米に広がりました。
隣国のカナダでは1948年に、そして海を渡ってヨーロッパでも1957年にフランスのINSEADがMBAを提供し始めました。
今では中東、アフリカ、アジアなど、2200以上のスクールで、7500を超えるMBAプログラムがあります(MBA情報サイトFind MBAの集計による)。
欧米企業ではマネージャー登用にMBAが必須とされることも多くあります。
下記は文科省の資料ですが、米国上場企業では部長職の約4割がMBAホルダーとなっています。

このようなビジネス界との長年の強い結びつきが、MBAの唯一無二の魅力となっているのです。
・パートタイム/オンラインMBA
マネジメントのエッセンスをパッケージで学べるMBA。
時代によって移り変わる社会のニーズに合わせて、様々なフォーマットが生まれてきました。
元々は通学型しかありませんでしたが、社会のニーズに合わせ、夜間や週末だけのパートタイムMBAやオンラインMBAが登場しました。
最近では超多忙なビジネスパーソン向けに、Mobile-first, AI-drivenを謳うモバイルベースのMBAも登場しています。
現代の国際アジェンダに合わせて科目やカリキュラムもどんどんアップデートされています。
最近ではほとんどのスクールが、データサイエンスやサステナビリティをカリキュラムに取り入れています。
2. MBAへの信頼を支える「認証制度」
・教育の質を担保
押さえておくべきポイントの二つ目は、MBAの根幹を支える「第三者機関からの認証」というシステムです。
これは、社会の期待に応える教育の質を担保するためになくてはならない、MBAのコア要素です。
欧米社会では”Credibility”がよく問題になりますが、MBAのCredibilityを支えているのがこの認証制度です。
第三者である「認証機関」からの客観的な監査をクリアすることによって、MBAプログラムと名乗るにふさわしい質が担保されたことになります。
監査においては、教育内容だけでなく、教員の資質や学生とのコミュニケーション時間数まであらゆる項目が対象となり、キャンパスに出向いての現地監査も数日間実施されます。
また一旦、認証を得たとしても数年おきに行われる監査で不合格となったスクールは、認証が取り消されてしまいます。
このようなタフな認証制度が、世界中の企業やビジネス界から高い信頼を得ている理由なのです。
・3大認証機関
アメリカで最初の認証機関は、ハーバードMBA創設の8年後(1916年)にできたAACSBです。
AACSB(認証950校以上)、英国のAMBA(同260校)、ベルギーのEQUIS(同210校)が3大認証機関と呼ばれています。
他にも多くの認証機関がありますが、MBAのランキングや評価の際には、この3大認証機関からの認証の有無が、最も基本的な確認ポイントとなります。
日本には、3大認証機関のうちいずれかの認証を持つスクールは10校あまりです。
国内の国際認証スクールリストや国際認証の無いスクールについては下記記事をご覧ください。
これからMBAを目指す方は、是非、この認証制度について正しい理解をなさって下さい。
3. まとめ
ここまでお読み下さって有難うございました。
MBAとは①人材教育であり、②第三者認証がその根幹を支えている、ということがご理解頂けたなら幸いです。
*この記事は執筆時点での筆者のリサーチに基づいています。最新情報などは是非、ご自身でご確認下さいますようお願いいたします。