オンラインMBAの出願にあたっては、職場の上司などに「推薦状」を書いてもらう必要があります。
「推薦」と言っても、何を書いてもらえば良いのか、どんな点について評価してもらうべきなのか、よく分からないという方も多いのではないでしょうか?
そういう方々のために、この記事では、多くのビジネススクールが使用している共通の推薦状の共通テンプレート(Common Letter of Recommendation, Common LOR)をご紹介します。
Common LORには「推薦状」に求めるツボが詰まっていますので、どなたにも参考になると思います。

推薦状作成はストレス?
最も面倒な「推薦状」
推薦状の役割は、本人の能力、人柄を含めた全体的な人物像を、本人をよく知る上司などに証明してもらうことです。
出願書類の中で、唯一、第三者に依頼しなければならない書類です。
推薦者の人選や依頼の煩わしさもあり、、推薦状作成にストレスを感じる人が多いようです。
GMAC1(脚注参照)の調査によると、出願手続の中で最も煩わしい作業として「推薦状」を挙げた人が4割もいます。
私の場合…
私自身もそうでした。
それまで推薦状を書いてもらった経験はありませんでしたし、MBA予備校やコンサルタントなど助言を仰ぐ先もなく、推薦状については分からないことだらけでした。
- 自分のどんな資質やスキルについて評価してもらえば良いのか?
- どんな書き方をしてもらえばよいのか?
- ひたすら褒めてもらう推薦状で果たしてOKなのか?
依頼する側がよく分かっていないのですから、依頼された推薦者はもっと戸惑ったことでしょう。
幸い、私のお願いした方は推薦状の経験者だったので何とかなったのですが、もし初心者(?)にお願いするしかなければ、相当難航したはずです。
共通テンプレート Common LOR
当時は全く知らなかったのですが、実は、推薦状にはGMACが作成した共通テンプレートがあります。
それがCommon Letter of Recommendation(Common LOR)です。
GMACが米国の有力スクールに対し、学生に求める資質について詳細なアンケートを取り、行動科学専門家の知見も取り入れて開発したそうです。
下記GMACサイトから、誰でも入手することができます。
インタラクティブPDFなので、適宜、書き込めばそのまま推薦状が仕上がるという代物です。
以下で、内容を詳しくご紹介します。
Common LORの内容
Common LORは、3セクションに分かれています。
1.Recommendation Information
一つ目は、Recommendation Informationです。
ここは推薦者のプロフィールを記載するセクションです。
必要なのは、推薦者の肩書やスクール側からコンタクトする際の連絡先などです。
推薦者が本人を推薦するにふさわしい人物であることが分かるように、両者の関係性を明示する欄もあります。
推薦状に盛り込むべき基本情報をここで確認することができます。
2.Leadership Assessment Grid
次は、リーダーシップに関わる能力や人柄に関するセクションで、下記の構成になっています。
- Achievement (Initiative/ Results Orientation)
- Influence (Communication, Professional Impression & Poise/ Influence and collaboration)
- People (Respect for Others/ Team Leadership/ Developing Others)
- Personal Qualities (Trustworthiness, Integrity/ Adaptability, Resilience/ Self-awareness)
- Cognitive Abilities (Problem Solving/ Strategic Orientation)
各コンピテンシーは下記のようになっています。

選択肢の中から、最もあてはまるものを一つだけ選ぶ形になっています。
MBAに必要なスキルセットのリストと見ることができますので、どなたにとっても参考になると思います。
セクションの最後には、本人の総合的なレベルを7段階で評価し、推薦のするかどうかを選択してもらう欄があります。
- Do not recommend this applicant
- Recommend this applicant, with reservations
- Recommend this applicant
- Enthusiastically recommend this applicant
となっており、「推薦しない」もありなのが米国らしいですね。
3.Recommendation Question
さて最後のセクションは自由記述で、3つの設問が用意されています。
1.Interaction with the applicant(up to 50 words)
本人についての具体的なエピソードを書いてもらう欄です。些細なエピソードでも構わないので、推薦者独自の視点でのspecificな内容にしてもらうことが重要です。
2.Comparison with other well-qualified individuals (up to 500 words)
同レベルの人材と比較してどうか?という観点で記載してもらいます。優れている点だけでなく、劣っている点も書いてもらうとフェアな評価という心証を与えます。
3.Constructive Feedback given to the applicant (up to 500 words)
本人に前向きな指摘をした際の事を書いてもらいます。当時の状況や本人の反応についても記載してもらう必要があります。MBAでは、課題や困難に対する対応力が重視されますので、それを反映した設問です。
これ以外に、任意で推薦者の思いを書いてもらえる自由欄もあります(字数制限なし)。
Common LORを採用するスクール
Common LORでの推薦状を求めているスクールは下記の通りです(執筆時点でのGMACWebサイトより)。
Asia School of Business – in collaboration with MIT Sloan Management Boston College – Carroll School of Management Boston University – Questrom School of Business Brandeis International Business School Carnegie Melon – Tepper School of Business College of William & Mary – Mason School of Business Cornell University – SC Johnson School of Business Dartmouth University – Tuck School of Business Duke University – The Fuqua School of Business Emory University – Goizueta Business School Fudan University – School of Management Georgetown University – McDonough School of Business Georgia Tech Scheller College of Business Indian School of Business New York University – Stern School of Business Northeastern University, D’Amore-McKim’s School of Business Notre Dame – Mendoza School of Business PennState University – SMEAL College of Business RICE University Jones Graduate School of Business Sabanci University – Sabanci School of Management Santa Clara University – Leavey School of Business Simon Fraser University, Beedie School of Business | Stanford Graduate School of Business Southern Methodist University – Cox School of Business The College of New Jersey The University of Texas at Austin – McCombs School of Business UC Davis Graduate School of Management UCI Paul Merage School of Business UCLA Anderson School of Management UNC Kenan-Flagler Business School University of California, Berkeley – Haas School of Business University of Florida – Warrington College of Business University of Georgia – Terry College of Business University of Kansas School of Business University of Michigan – Ross School of Business University of Minnesota – Carlson School of Management University of Rochester – Simon Business School University of San Francisco – School of Management University of Virginia – Darden School of Business Vanderbilt – Owen Graduate School of Management Washington University in St. Louis – Olin Business School Yale School of Management |
Common LORの活用法
Common LORはGMAC(非営利組織)が提供するフリーのテンプレートで、上記以外のスクールにも提出可能です。
とは言え、Common LORをそのまま丸ごと使用するのに抵抗がある方も多いかもしれません。
このようなテンプレートを好まない推薦者もいらっしゃるでしょう。
その場合でもたとえば、推薦者にCommon LORに目を通して頂く、または要約したものをお渡しするのはいかがでしょうか?
MBAのスキルセットが一覧できますし、着目すべき観点をご理解頂くガイダンスになるかと思います。
更にご自身がエッセイや履歴書を書く際にも、評価項目やWordingが非常に参考になると思います。
ガイダンスがあれば、何もお手本がないよりは出来栄えが良くなるのではないでしょうか?
是非、色々と活用なさってみてください。
まとめ
この記事では、オンラインMBA出願における推薦状の共通テンプレートであるCommon LORについてご紹介しました。
この記事でお伝えしたこと
推薦状の共通テンプレートである”Common LOR”は誰でも利用可能
Common LORは、推薦状だけでなく、本人作成書類(エッセイや履歴書)のガイダンスにもなる
*本記事の内容は、あくまでも執筆時点での筆者のリサーチに基づいています。各校の最新情報は必ず、スクールのウェブサイトでチェックなさってください。
- ビジネススクール向けの共通試験GMATの実施団体 ↩︎