【海外MBA】元専業主婦でも合格できた 「ホリスティックアプローチ」とは?

MBA出願

海外MBAへの挑戦は、多くの人にとって大きな夢であり、同時に大きな挑戦でもあります。

この記事では、元専業主婦である筆者が「ホリスティックアプローチ」を活用してMBAに合格した経験をもとに、その重要性と対策をご紹介します。

あなたの可能性を最大限に引き出すヒントが見つかるかもしれません⁠。⁠​

1. はじめに

海外駐在やマネジメント経験もない私が、海外MBAの入学審査に合格できた理由の一つが、「ホリスティックアプローチ」です。

これは包括的/全人的アプローチとなどと訳されますが、MBAの世界では非常に重要な概念です。

この記事ではその起源やスクールでの適用例を踏まえ、出願における対応策についてお伝えしたいと思います。

2. ホリスティックアプローチとは?

・「ホリスティック」の起源

「ホリスティック」(holistic)という言葉は、ギリシャ語の「holos」(全体)に由来します。

この概念は、個々の部分を単独で見るのではなく、全体としてシステムや現象を理解しようとする考え方を指します。

20世紀初頭に南アフリカの政治家Jan Smuts氏によって提唱されたこの概念は、その後、医学、教育、心理学など様々な分野に広がりました。

一般的に、「ホリスティックアプローチ」いった場合、以下のような特徴を持ちます:

  • 全体性:個々の要素を総合的に見る
  • 相互関連性:各要素間のつながりを重視する
  • 多面的視点:様々な角度から対象を捉える

・MBAでのホリスティックアプローチ

MBAプログラムにおけるホリスティックアプローチとは、MBA出願者を「包括的」「全人的」に評価する方法です。

つまり、GPA(Grade Point Average)やGMATスコアといった数値だけでなく、出願者の経験、リーダーシップ能力、将来の可能性など、多面的な要素を総合的に判断するのです。

ホリスティックアプローチの起源は、1920年代にさかのぼります。ハーバード大学が、学業成績だけでなく「人格」も含めた評価を始めたのが最初とされています。

その後、1970年代から80年代にかけて、多様性の重要性が認識されるようになり、より包括的な評価方法としてホリスティックアプローチが米国で広く採用されるようになりました。

出所:Harvard Universityウェブサイト

2003年には、米国最高裁判所がミシガン大学ロースクールの入学者選抜におけるホリスティックアプローチを支持する判決を下し、この評価方法の正当性が法的にも認められました。

これを機に、MBAプログラムを含む多くの欧米高等教育機関でホリスティックアプローチが標準的な評価方法となっていきました。

・ホリスティックアプローチの利点

ホリスティックアプローチによるスクール側の利点は、以下の通りです。

多様性の促進*:様々なバックグラウンドの学生が集まることで、クラスの学習環境が豊かになります

公平性の向上:一つの指標だけではなく、多面的な評価を行うことで、より公平な選考が可能になります

潜在能力の発見:数字では測れない才能や可能性を見出すことができます

ミスマッチの防止:学生とプログラムの相性を総合的に判断できるため、入学後のドロップアウトを減らせます

*2023年の「Students for Fair Admissions v. Harvard」判決により、人種を直接的な評価要素として使用することが禁止されました。これにより、米国の大学は人種による多様性確保ができなくなりました。今後は、経済的背景、地理的多様性、個人的経験など、人種以外の要素が様々に活用されるようになると思われます。

3. ビジネススクールでの実例

ホリスティックアプローチは、世界中の多くのビジネススクールで採用されています。いくつかの具体例を見てみましょう:

・Harvard Business School

ハーバードは、「リーダーシップの可能性」を重視しています。彼らの選考プロセスでは、学歴や職歴だけでなく、候補者の「何を」だけでなく「どのように」達成したかを評価します。例えば、困難な状況でどのようにリーダーシップを発揮したかなどです。

・Stanford Graduate School of Business

スタンフォードは、「知的活力」「個人の資質と貢献」「リーダーシップの可能性」という3つの基準を用いています。彼らは、単なる成功だけでなく、その過程での学びや成長を重視しています。

・INSEAD

フランスのビジネススクールINSEADは、国際的な視点を重視しています。彼らの選考プロセスでは、学歴や職歴に加えて、異文化理解能力や国際経験を高く評価します。また、「多様性」を重視し、クラスの多様性を確保するために様々なバックグラウンドを持つ候補者を選考しています。

上記のようなトップスクールばかりではなく、スタンダードレベルのスクールでも選考はホリスティックな観点から実施されます。

・University of Maine

同校では、ホリスティックアプローチについて下記のように説明しています。

We’re far more interested in who you are and what you can bring to our campus community than how you happened to score on a high-pressure, high-stakes standardized test.

When we review your application we take the time and care to get to know you as an individual, not as a number on a score sheet.

彼らは大学運営者として、「大学の価値を高めてくれる人材」を求めており、「出願者が大学コミュニティに何をもたらしてくれるか」が一番の関心事です。

それはテストの点数では評価できず、その出願者が全体としてどんな人物なのかを手間暇かけて知る必要があります。それがホリスティック選考なのです。

4. ホリスティックアプローチへの対応策

・大きなチャンス

一方、MBA出願者の側から見てもホリスティックアプローチは、大きなチャンスです。なぜなら:

  • 「自分らしさ」を表現できる:数字だけでは語れない自分の魅力をアピールできます
  • 弱点をカバーできる:例えば、GPAが低くても、優れたリーダーシップ経験で補うことができます
  • 成長の機会:自己分析を通じて、自分自身をより深く理解できます

・具体的な対応策

具体的な対応策としては、以下のようなものが挙げられます。

自己分析と価値の言語化:自分のユニークな経験や強みを深く分析し、それらをMBAプログラムにどう活かせるか具体的に説明できるようにする⁠1

多面的な経験の強調:職歴だけでなく、ボランティア活動や個人的なプロジェクトなど、多様な経験を強調する⁠⁠

リーダーシップ経験の具体化:管理職でなくても、プロジェクトでのリーダーシップや困難を乗り越えた経験を具体的に説明する⁠⁠

ユニークな視点の提示:自分のバックグラウンドがどのようにMBAクラスに多様性をもたらすか説明する⁠⁠

継続的な学習意欲の証明:関連分野のオンラインコースの受講や資格取得を通じて、学習への熱意を示す⁠⁠

出願エッセイの活用:自身の経験から学んだことや、それをMBAでどう活かすかを詳細に説明する⁠⁠

これらの対策を通じて、数字だけでは測れない自分の価値をアピールし、ホリスティックな評価において強みを発揮することができます。

Duraham Universityのアドミッションオフィスでは下記のように説明しています。ご参考になれば幸いです。

We take a holistic approach to all our applications, taking multiple factors into account to identify those with the greatest merit and potential.

All of the information in your application would be considered. This includes your personal statement and academic credentials, which we would assess against the advertised entry requirement.

5. 元専業主婦でもMBA?

・似つかわしくない経歴

参考になるか分かりませんが、ホリスティックアプローチのお陰で入学できた(と思われる)私の事例をご紹介します。

私自身は、輝かしい経歴のない元専業主婦です。

留学経験もなく、10年ほど子育てに専念した後、非正規労働者として様々な職場で期限付きで働いていました。

もちろん管理職ではありませんし、そもそも周りにMBAホルダーのいる環境でもありませんでした。

一見すると、MBA出願者に似つかわしくないバックグラウンドです。

・自分の価値の棚卸と言語化

しかし思い込みを排し、客観的に自分のリソースを棚卸し、価値として言語化してみると、私のようなバックグラウンドのMBA出願者は、逆に非常にユニークであることに気づきました。

楽観的なのかもしれませんが、私はこれが自分の価値になると考えました。

・マイナスをプラスに

そこで出願エッセイでは、以下の点を強調しました:

  • MBAで多数派となる欧米人とは違う文化、考え方を持っている
  • 生涯同じ企業に勤めるのが一般的な日本で、様々な組織に関わり、多様な経営スタイルを観察してきた独自の経歴
  • 管理職ではなかったものの、実力が認められて組織の一大プロジェクトを任され、成功まで導いた経験

「だから私は、貴校にこれまでになかったユニークな価値観を提供することができます!」と主張しました。

・自己アピールが自分を支える

特筆する資質もキャリアもない私がMBAプログラムに受け入れられたのは、まさにホリスティックに評価してもらえたおかげだと思います。

総合的な自分の価値をアピールし、認めてもらえた喜びは、その後のキャリアでも常に私を支えています。

6. 最後に

ホリスティックアプローチは、MBA出願者の多面的な魅力を評価する方法です。

単に「優秀な」学生を選ぶのではなく、多様な才能と可能性を持つ学生を見出し、豊かな学習環境を作り出すことを目指しています。

どうか、皆様もホリスティックな観点から、自分の価値を見つめなおし、表現してみてください。

私にとっては、MBAへの挑戦が新しい自分との出会いとなりました。

是非、皆様も自己理解を深め、さらなる成長につなげてください。皆様の挑戦を心から応援しています。頑張ってください!

*この記事は執筆時点での筆者のリサーチにもとづいています。情報の正確性には細心の注意を払っていますが、内容の最新性や完全性を保証するものではありません。