「海外のオンラインMBAに挑戦したい。でも英語の講義について行けるか心配」
そういう方は、是非一度、MBAの公開講義にビジター参加してみてはいかがでしょうか?
海外MBAにはClass Visitという公開講義の仕組みがあり、現役MBA生向けのリアル講義を無料で体験できます。
この記事では、海外オンラインMBAの公開講義について、登録方法から実際の体験レポートまでたっぷりご紹介します。

1.公開講義(Class Visit)の勧め
・私も最初は不安でした…
プロフィールにも記載していますが、私は留学や海外駐在の経験はありません。
なので、45歳で英国MBAを志した時、最も心配していたのは、
「英語の講義についていけるだろうか?」
ということ。
MBAホルダーの知人もいませんし、講義のレベル感についての情報がなく、具体的なイメージが全く湧かなかったのです。
・リアルMBA体験 ”Class Visit”
もし、私と同じような心配をお持ちであれば、ご安心ください!
当時の私は知らなかったのですが、実はオンラインMBAには志願者向けの体験システムがあるのです。
体験用のデモ講義ではなく、現役MBA生用の正式講義にビジター参加させてもらえるのです。
まさにリアルMBAです。
公開講義の形式は様々で、”Class Visit”として定期開催しているスクールもあれば、アドミッションオフィスに頼んで個別に対応してくれるスクールなどがあります。
・公開講義のメリット、デメリット
公開講義には様々なメリットがあります。
- 誰でも無料で手軽に参加できる
- 講義の雰囲気、進行のイメージがつく
- 必要とされる能力、レベルのイメージがつく
- スクールとのコミュニケーションのきっかけになる
一方、デメリットは特に思いつきません。
デメリットではありませんが、敢えて言うなら、講義のレベルがあまりに高すぎた場合、自分の実力とのギャップにうちのめされるリスクはあるかもしれません。

以下では、私が実際に体験したCarnegie Mellon University(カーネギーメロン大)の公開講義についてご紹介します。
2. カーネギーメロンMBAの公開講義
・カーネギーメロン大学とは?
Carnegie Mellon Universityは理工系の名門で、近年は特にコンピュータサイエンス分野で名を馳せています。
オンラインMBAは、どのランキングサイトでも毎年トップクラスです。
・ハイブリッドMBA
MBAプログラムは、同校のTepper Business Schoolで開講されています。
理工系のアプローチを重視したSTEM-designated MBAと銘打たれています。
ハイブリッド型なので、一部ですが対面パートがあります。
一方、オンライン講義は全て録画・アーカイブされています。
・申込手順
申し込み手順は至って簡単。
まずはClass Visitのページを開いてください。リンクはこちら
下にスクロールすると、カレンダーがあります。
体験参加が可能な日がグリーンで示されています。
グリーンの中から希望日を選択すると、対象の講義名と時間帯が表示されます。
下図ではたまたま、3回とも同じ科目ですが、日によっては各回で違う科目が提示されることもあります。
同校のあるピッツバーグのタイムゾーンはEastern Standard Timeで、日本との時差は13時間(夏時間)です。
Class Visitは現地で平日の夕方~夜に設定されているので、日本だと早朝~午前中にあたります。
希望の回を選択すると、以下のような登録画面が出てきます。
Submitすれば、すぐに登録アドレスに下記のようなヘッダーの確認メールが届きます。
Zoomリンクは、当日の朝(現地時間。日本時間の真夜中)にメールで届きます。
予習や準備アイテムなどはありませんので、時間になったら当該リンクにアクセスするだけでOKです。
3. 【体験レポート】カーネギーメロンMBA
さてここからは過日、筆者が実体験したライブ講義についてレポートします。
・サマリーデータ
日時: 某年某月某日 AM7:45-9:00(日本時間)
講義名:Ethics and AI(75分)
参加者:23名(うち何名が体験参加者かは不明)
形態: Zoom
・クラスの雰囲気
講師はフレンドリー。話すスピードはノーマルで、発音は分かりやすかったです。
参加者23名のうち、ビデオをオンにしていたのは約半数。みんなリラックスした雰囲気でした。
他スクールの公開講義では、体験参加者をクラスに紹介したり、授業の最後にコメントを求める講師もいましたが、今回はそういった事はなく、英会話が苦手な私としてはホッとしました。
・授業の進行
基本的には講師がトピックについて説明し、時折学生に質問を投げかけて議論が展開される、というスタイルでした。
喧々諤々、議論百出といった雰囲気ではなく、緩やかにインタラクティブといった感じで、以下の3つのパターンのインタラクションがありました。
- ZoomのVoting機能:賛成/反対をボタンで表示。各人の意思は画面上で分かる。
- 講師の指名:講師によって指名された学生が発言する
- 学生の自主的コメント:「誰か意見のある人は?」という講師の問いかけに任意で反応する
1.のVotingは何度かありましたが、全員一致で賛成(反対)となった事は一度もなく、常に少数派が存在しました。
オンラインMBAには多様な学生が集まっており、それぞれの観点が異なるからだと思います。
2.で指名されるのはビデオオンの学生に限定されており、「ビデオオン=指名されてもOK」「ビデオオフ=聞き役に徹したい」という暗黙の意思表示だったのかもしれません。
指名ではなく、「誰でもいいから意見をどうぞ」と全員に呼びかけられた場合(パターン3.)では、割とシーンとした反応で、唯一、反応していたのは毎回同じ学生でした。
Zoomなので他の人の動きが分からず、互いに遠慮したのか、自説に自信がないのか、それともみんなシャイだったのかは分かりません。
・講義内容
たった75分の講義でしたが、「AIと倫理」という旬なテーマだけあって、非常に興味深く、数えきれないほどの気づきがありました。
最初のトピックだった「AIを使ったTarget Marketing」の進行メモをここで、再現します。
講義中にテキストや資料など文字情報の投影はなく、オーラルコミュニケーションの身で進行したので、全集中でリスニングしました!
- 講師から、Discrimination LawとPersonal Advertisementとの関りについて説明。
- 指名されたTech企業勤務の学生が「AIによる求人広告の効果はかなり高い」と具体的な数値も挙げてAI広告を擁護。まさにWorking Professionalの集まるオンラインMBAならではのリアルな学び!
- 彼の発言を受けて、「じゃあ、Human Taskを全てAIで自動化すれば、より高い成果が得られるのか?」という議論に発展。
- Votingすると反対派が多く、「人間でしか出来ない事」や「人間がすべき事」があるとの意見が出た。「人間がすべき事」とは、たとえば「内容に責任を持つこと」など。
- その流れで、AIによる採用面接で、AIが求職者の表情を読み取ることの是非についてVoting。
- 「肌の色での人種差別に繋がる」「表情は”Personality”に関わるのでダメ」「俳優など、表情が職務に影響するならOKでは?」など賛否両論。
こんな感じでいくつかのトピックについて、議論が展開され、あっという間に講義終了となりました。
・公開講義からのTakeaway
今回のClass Visitは予習が不要だったとはいえ、終了後に改めて痛感したのは、
講義をフルに理解し、自分の力へと昇華させるには、やはり準備が必要
ということです。
「準備」とは具体的に言うと、下記の3つです。
①幅広いスコープでの勉強
講義中には、幾つかの専門用語が出てきました。
たとえば、correlation(相関)、invisible hand (アダム・スミスの「神の見えざる手」)、Efficient Market Hypothesis (効率的市場仮説)、Utilitarialism(功利主義)などの統計・経済用語です。
統計や経済学などMBAのコア科目ではないエリアでも、幅広く学んでおいた方がより講義への理解が深まると感じました。
私自身はMBA在学中に、Courseraなどを併用してそれらを勉強していました。
②時事への目配り
またEUのGDPR(一般データ保護規則)、米国のDiscrimination Lawに関わる近年の判例など、欧米中心の時事にも頻繁に言及がありました。
これらの時事知識の有無は、授業の理解度に大きく関わります。
オンラインMBAでは欧米以外の学生も多いため、講師も頻繁に、「XXXという事件を知ってる?」「XXXという言葉を聞いたことがある?」などと、学生たちの前提知識を確認していました。
私の場合、スクールが英国だったので、当時はFinancial TimesやBBCのニュースをできるだけ視聴するようにしていました。今でもこの習慣は継続中です。
③自国への客観的な目線
日本と欧米では、政治・経済だけでなく、文化やビジネスプラクティスにおいてかなりの違いがあります。
今回の講義で言えば、たとえば「人種差別」という問題の深刻さにはかなりのギャップがあります。
日本ではあまり普及していない「AI面接」に対しても、具体的な意見を持つ日本のビジネスパーソンは少ないかもしれません。
あるテーマを議論する際、そもそもの前提条件が違うということです。
これは、日本人に限らず、多くのInternatinal Studentsが直面する問題だと思います。
私の場合は、想像力を駆使してマジョリティの前提条件を理解するように努める、もしくは、「日本ではこういう風になっている」など、日本特有の条件や事例を説明する、という両方向の対応をしていました。
いずれにしても、常に自国のプラクティスを客観的に見つめておくことが一番の対策になるように思います。
4. まとめ
公開講義というシステムの存在を知らないまま、MBAに飛び込んでしまった私としては
「一度でもClass Visitを体験していれば、入学後にあんなに苦労しなかったかも??」
という大きな反省があります。
だからこそ是非、MBAを志願する皆様には公開講義への参加を強くお勧めしたいと思います。
この記事でお伝えしたこと
MBAの公開講義は誰でも無料で参加できる
Carnegie Mellon Universityの公開講義”Class Visit”の申込は簡単
講義内容をより深く理解するには、以下の3つが必要
①幅広いスコープでの勉強 ②時事への目配り ③自国への客観的な目線
*本記事の内容は、あくまでも執筆時点での筆者のリサーチに基づいています。