【海外MBA】成績証明書(トランスクリプト) 入手から提出まで GPAについても解説

MBA出願

MBA出願に必要な成績証明書(トランスクリプト)は、入手から提出までにいくつもの関門があり、なかなか厄介です。

特に「GPA」という評価指標になじみが無い方だと尚更です。

この記事では、トランスクリプトの入手から提出までの作業について、スクールでの実例をもとに丁寧に解説します。



1. トランスクリプトとは?

・全履修科目の成績証明書

トランスクリプト(Transcript)とは、”academic record”や”transcript of record”とも呼ばれ、大学での全履修科目の成績を証したものです。

日本では成績証明書などと呼ばれ、MBA出願でも重要な書類です。

志望校が決まれば、トランスクリプトの要件を確認し、早めに出身大学に発行依頼をなさることをお勧めします。

下記は早稲田大学のもので、成績証明書兼GPA証明書となっており、右下に「GPA」が記載されています(GPAについては後述)。

出所:早稲田大学ウェブサイト

2. Official? Unofficial?

・違いは「真正性」

海外のトランスクリプトには、Official transcriptUnofficial transcriptという区別があります。

出願時には”Unofficial”、合格後に”Official”を提出するというスクールが多いです。

Official transcriptとUnofficial transcriptの違いは「真正性」です。

日本には成績証明書(トランスクリプト)に公式/非公式という概念がないので、イマイチ分かりにくいかもしれません。

・Official transcript

Official Transcriptとは文字通り正式な文書で、「成績が真正であることの証明」となります。

改ざんを避けるため大学名の透かしと公印の入った紙に印刷され、大学用の封筒に封緘して郵送されます。

合格後、このOfficial Transcriptを厳封してスクールに郵送することになります(厳封については後述します)。

厳封されたOfficial transcriptは下記のようなイメージです。

出所:California State University Monterey Bay

ちなみに欧米(特に米国)では、デジタルベースのOfficial Transcriptが主流となりつつありますが、日本ではまだほとんどありませんので、当記事での説明は省かせて頂きます。

・Unofficial Transcript

一方、Unofficial transcriptとは真正性が担保されないTranscriptのことです。

たとえば、Official Transcriptのスキャンコピーなどは、Unofficial transcriptと見なされます。

出願時に仮提出するのは、このUnofficial transcriptで良いとするスクールが多くあります。

3. 窓口申請?ウェブ申請?

さてトランスクリプトがどんなものかご理解いただいたところで、日本の大学での発行申請について見ていきましょう。

ここからは日本の手続きですので、トランスクリプトではなく「成績証明書」と呼称します。

多くの大学が「卒業生向け証明書発行」といったページに、申請手続きについて詳しく掲載していると思います。

出所:早稲田大学ウェブサイト

・窓口申請

成績証明書の申請手段は、学部窓口での直接申請、郵便、メール、電話、FAX、オンライン申請があります。

たとえば東京大学法学部北海道大学工学部ではメール、電話、FAX、オンラインでの発行依頼は不可で、窓口か郵便にて申請する必要があります。

窓口申請の手順はおもに下記のような感じです。

出所:北海道大学工学部ウェブサイト

・オンライン申請

早稲田大学慶應大学京都大学などでは、オンライン申請が可能です。

コンビニで電子透かしが入った証明書を出力できるのですが、多くのスクールで電子証明書の場合は、真正性担保のため、本人ではなくスクールからの直送が求められます。

従って、MBA出願ではコンビニ出力の証明書はUnofficial transcriptとしては使えても、Official transcriptとは使えない可能性があります。必ず提出先のスクールにご確認なさって下さい。

早稲田では、タイムスタンプとデジタル署名が付されたデジタル証明書を提出先のスクールに直送してくれます。

4. 英文で発行

申請に当たっては、忘れずに英文での発行を申請してください。

ほとんどの大学が英文発行に対応してくれると思います。

もしどうしても英文対応が無理と言われれば、和文の成績証明書を翻訳文と併せて提出することになります。

・Certified Translatorによる翻訳

この際、問題になるのが「誰に翻訳してもらうか?」です。

どんな翻訳者による翻訳でも受け付けてくれるスクールなら良いのですが、中には「資格を持った翻訳者(Certified Translator)でないとダメ」というスクールもあります。

特に米国スクールは、具体的に翻訳機関を指定するケースもあります。

日本には翻訳者の資格制度はありませんので、ご参考までに欧米のCertified Translationサービスをご紹介しておきます。

  1. ATA(American Translator Association) University of California, Berkeleyなどが指定
  2. Josef Silny & Associates University of Pennsylvaniaなどが推奨
  3. Dialexy University of Bradfordなどが推奨

・姓名等の表記の確認

もし姓名のローマ字表記にブレの可能性がある方は、発行依頼時に正式な表記を伝えておかれることをお勧めします。

英文成績証明書上の姓名は、パスポートに表記されたローマ字表記と同一でなければなりません。

出所:外務省ウェブサイト

ローマ字にはヘボン式と訓令式があり、たとえばMitsuko/ Mituko、Tadashi/ Tadasi、Shohei/ Shouheiなど、綴りによっては正式表記と異なる表記で発行されるかもしれません。

実は、姓名表記については私自身、うっかりミスをしてしまいました。

成績証明書が旧姓で発行されているのに気づかず、そのまま提出してしまったのです。

当然、エッセイや履歴書などは新姓でしたので、スクールから書類の不一致を指摘されました。

「トランスクリプトは結婚前の苗字です」という簡単な釈明で済むと思いきや、全然そうはいきませんでした。

後で調べたところ、「改姓名届」を提出すれば新姓で発行してくれる大学もあるようです。

下記記事にその顛末を記載しております。よろしければご覧ください。

5. 厳封の依頼

前述の通り、スクールに提出するのは厳封した成績証明書となります。

厳封、封緘というのは、機密書類を厳重に密封することで、未開封を証すため封印するのが一般的です。

たとえば関西大学では、大学の公式封筒の裏面2か所に封印が施されます。

出所:関西大学ウェブサイト

下記は、California State University, Monterey Bayの送付封筒のサンプルです。

フラップ部は封印/署名されており、未開封であることが一見して分かるようになっています。

出所:California State University, Monterey Bayウェブサイト

厳封の対応は大学によって異なるため、申請時に必ず厳封が必要な旨を大学に伝えるようになさって下さい。

ただ開封しない事には自分の成績が分かりませんので、可能であれば提出用とは別に手元用も入手しておくことをお勧めします。

6. GPAの確認

さてここからは、GPA要件のあるスクールへの出願という前提でお話しさせて頂きます。

このGPAはトランスクリプトの最大の難関ともいえます。

GPAなんて聞いたことが無いという方もいらっしゃると思いますので、丁寧にご説明したいと思います。

・GPA3.0以上が一般的

GPA(Grade Point Average)とは、主に米国で用いられる成績指標です。

各科目の5段階評価(A, B, C, D, F)に、4~0の評価点(Grade Point)を付与し、全ポイントの平均値がGPAです。

一般的に、学部レベルではGPA2.0以上、大学院ではGPA3.0 以上(平均B以上)であることが要求されます1

・GPA非導入の国では…

一方、欧州ではイギリスを始め、GPAを導入していない国もあり、MBAの成績要件としては下記の3パターンがあります。

  1. GPA要件あり(学部レベルでGPAを導入していなくても大学院の入学要件にはGPA要件を設定するスクールも多い)
  2. 自国の評価制度での要件あり(例えば”UK second-class (2:2) honours degree or equivalent”など)
  3. 成績要件は一切無し

2.の場合、下記のように国別の読替基準を公開してくれているスクールもあります。

出所:University of Aberdeenウェブサイト

3. のパターンには、たとえばスペインのIE、ドイツのESMT Berlin、イギリスのOxford Brookesなどがあります。

成績要件を掲げていないIEに問い合わせたところ、

We don’t set any minimum requirement for GPA, but it will be considered throughout the evaluation process.

という回答でした。

つまり下限の設定はないとしてもGPAは選考で考慮されるという事です。ご注意なさってください。

・GPAの記載があるか?

では改めて、GPA要件のあるスクールへの出願という前提でご説明していきます。

GPAが日本に導入されたのは、2000年前後です。

ですので、それ以降に大学を卒業なさった方々だと多くの場合、下記のようにGPAが記載されていると思います。

出所:早稲田大学ウェブサイト

一方、それ以前に卒業なさった世代だと、残念ながらGPAの記載は無いと思います

下記のようなタイプです。

出所:早稲田大学ウェブサイト

成績一覧はありますが、各科目のポイントやGPAの記載はありません。

私もこのタイプでした。

ただこのようにGPAの記載が無くても、一般的にはそのまま提出しても大丈夫です(後述します)。

・GPAは足りているか?

さてGPAについては、もう一つの関門があります。

つまり「スクールの求める要件に足りているか?」です。

多くのスクールがGPA3.0を要件としています。

もし足りなかったらどうしたらよいのでしょうか?MBA出願を諦めるしかない?

いえいえ。そんな必要はありません。

・GPA不足は経験でカバー

どうするかというと…。

エッセイや履歴書などで自分の価値を最大限アピールすればいいのです。

Colombia Business Schoolの元アソシエイト・ディレクター、Deena Maerowitzさんも下記のように仰っています3

Business schools prefer students who have a history of tackling leadership roles in both their careers and extracurricular activities, partly because those students are likely to be active participants in MBA student clubs. So MBA applicants who have led organizations and been civically engaged in their local communities may be able to compensate for a less-than-ideal grade in a quantitative course.  Source: U.S News and World Report

従ってGPA不足だとしても、エッセイやレジュメに「職場でチームを率い、部署の成功に大きく貢献した」等としっかり書かれていれば、合格の可能性があるということです。

またColorado State Universityのように、GPA不足の理由について申し開き(!?)するよう明記してくれているスクールもあります。

出所:Colorado State Universityウェブサイト

MBAの選考は「ホリスティックアプローチ」という、全ての書類に基づいて包括的に出願者の人物像を判断する手法がとられています。

特に、working professionalを前提としたオンラインMBAでは、学生時代の成績より社会人経験の方がより今後のパフォーマンスと関連性が高いと考えられています。

つまりオンラインMBAの選考では、GPA不足は経験でカバーできるということです。

7. 成績の読替

上記のように日本には、

  1. GPAが記載されている成績証明書またはGPA証明書
  2. GPAが記載されていない成績証明書

があります。

またGPAが記載されてあっても、その算出方法や運用実態は統一されておらず、大学ごとにバラバラです2

従って日本の成績証明書の提出には下記2パターンあります。

  1. そのまま(読替なし)で提出
  2. 第三者機関で読み替えて提出

少しわかりにくいと思いますので、それぞれ詳しくご説明します。

・①そのまま(読替なし)で提出

欧州を中心に多くのスクールでは、日本の成績を読み替えずにそのまま提出してOKです。

欧米のスクールは多くの海外学生を受け入れているため、様々な国のグレードシステムについての知見があり、独自の読替手段を持っているからです3

たとえば、英国のDurham Universityでは、”you can submit it as is, and we will work out the equivalencies at our end”としています。

つまり日本の英文成績証明書をそのまま提出すれば、読替作業は彼らサイドで行ってくれるという事です。

ただ中には、New York Universityのように下記のようなSelf-reported-formへの記入が指示されることもあります。

出所:New York Universityウェブサイト

同フォームでは、日本の成績証明書には一般的に記載されない不合格科目についても記載するようになっています。

このような場合は、スクールに具体的な対応を問い合わせる必要があります。

・②第三者機関で読み替えて提出

もう一つが、第三者機関に依頼して(有料)、日本の成績を米国基準GPAに読み替えたレポートを発行してもらい、それを成績証明書と併せて提出するパターンです。

下記はBaylor Universityですが、米国以外の成績については第三者機関による評価(=読替)が必要としています。

出所:Baylor Universityウェブサイト

評価機関としては、WESSpanTranの指定が多いです。

WES iGPA Calculator - WES.org
WES provides free tools to help you calculate your GPA, determine your degree equivalency in the U.S. and Canada.

読替結果については、本人からではなく、WESからスクールに直送するよう指定されるケースもよくあります。

十分な時間の余裕を持って利用されることをお勧めします。

WESの具体的な手続きは、下記サイトが詳しく解説してくれています。

信用評価機関とWESについて アメリカ大学留学奨学金
信用評価機関とWESについてページです。留学のグローバルスタディは海外留学を斡旋・手配・手続き代行。説明会・セミナーを開催。奨学金留学・語学留学・大学留学・格安留学・アメリカ留学・フィリピン留学など。

8. スクールへの発送

・注意点と送付ルート

厳封されたOfficial transcriptは、多くの場合、合格オファー後に送付することとなります

送付の際は、下記にご留意ください。

送付ルートは、以下のどちらかとなります。

  1. 発行大学からスクールに直送
  2. 本人がスクールに送付

・スクール直送に対応不可の場合

上記1. のルートでご注意いただきたいのは、日本特有の事情として、大学側が直送を拒絶するケースがあることです。

その場合の対処法は2つあります。

  1. スクールに事情を説明し、許可をもらって本人が送付する
  2. 発行大学に交渉し、実際は本人が発送手続きをするが、発送元は大学担当者とする

いずれにしてもスクールや大学との交渉が必要ですので、早めに段取りしておかれることをお勧めします。

ちなみに直送してもらえる場合でも「発送中の事故の責任は申請者が負います」といった宣誓書の提出が求められるケースがあります。

9. まとめ

このように成績証明書(トランスクリプト)を無事提出するまでには、色々と作業が発生します。

何か困った事があれば、早めにスクールに問いあわせる事をお勧めします。

幸い、欧米スクールは紋切り型の対応はしませんし、出願者を「潜在的顧客」と見なしていますので、ケースバイケースで柔軟に対応してくれます。

また常日頃から様々なバックグラウンドの学生たちに慣れていることもあり、トラブルシューティングのリソースが豊富です。

これも含めてMBAジャーニーと捉え、一歩ずつ前進なさってください。

*本記事は執筆時点での筆者のリサーチに基づいています。スクールごとの最新情報はスクールウェブサイトでご確認ください。

  1. https://educationusa.jp/steps/schedule_supplement.html#step04 ↩︎
  2. https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/__icsFiles/afieldfile/2018/11/12/1410961_1_1.pdf ↩︎
  3. https://mbaadmit.com/how-to-convert-a-foreign-gpa/ ↩︎