「海外経験もないし、海外MBAなんて無理」—そう思い込んでいませんか?
私は海外経験ゼロの元専業主婦。恥ずかしながらMBAの存在自体、知りませんでした。
そんな私が、なぜ海外MBAに挑戦する気になり、そしてどうやって英語力を磨いたのか?この記事では私の英語学習ヒストリーをご紹介します。

1. 三つのステージ
私の英語学習ヒストリーは、基礎(土台作り)、発展(刷り込みと上乗せ)、ハイパー(英語をツール化)という三つのステージで構成されています。
と言っても私の場合、MBAは当初の目標ではありませんでした。
キャリアの節目を重ね、英語を実践的なツールとして使いこなせる自信が育つにつれ、海外MBA(オンライン)への挑戦が視野に入るようになったのです。
以下でそれぞれのステージについてご紹介します。
2. 基礎:土台作り
社宅住まいの専業主婦だった私が、大学以来遠ざかっていた英語学習を再開したのは30代半ば。
生活上の理由で働く必要に迫られ、「手に職をつけたい」という切実な思いがありました。
手先が不器用で気が利かず、数字にも弱い私にとって、選択肢は限られており、様々な可能性を検討した結果、地道に英語を勉強してみることに決めました。
時間もお金もなく、当然、キャリアの見通しも全くありません。
ただ「英語を使う仕事に就ければいいな」という楽観的な気持ちで始めただけで、まさか海外MBAに挑戦するとは夢にも思いませんでした。実際、「MBA」という存在自体をほとんど知らなかったのです。
確固たる見通しもないまま始めた英語学習ですが、今思い返すと最初の基礎ステージには三つの重要なポイントがありました。
一つ目は、教材を厳選したことです。大学受験時に使い慣れた旺文社の「ターゲット」と桐原書店の「英語頻出問題総演習(英頻)」のみに集中しました。
この2冊を徹底的にマスターすることで、強固な英語の土台を築くことができました。この土台が、後の英検1級、TOEIC900点超え、そして海外MBAの取得まで、すべての基礎となりました。
二つ目は、子供たちのお昼寝タイムを効果的に活用したことです。この時間帯が私の唯一の勉強時間でした。
お昼寝タイムが自然と学習時間となり、勉強が生活の一部として定着しました。このルーチン化が、継続の大きな力となりました。
三つ目は、限られた時間から生まれた集中力です。子供はいつ起きてくるか予測できず、起きれば即座に勉強はストップしなければなりません。どうしてもお昼寝してくれない日は諦めるしかありません。
このような1秒も無駄にできない状況が、かえって完全な集中力を引き出してくれました。
- 教材を絞る
- 勉強をルーチンとして生活に取り込む
- 限られた時間で完全集中
3. 応用:刷り込みと上乗せ
上記のようなアプローチで英語の土台をしっかり固めたのち、徐々に応用ステージに入りました。
このステージでは、三つの重要なポイントがありました。
一つ目は、具体的な目標設定です。「X月X日に英検準1級受験」という明確な目標を設定することで、継続的なモチベーションを維持することができました。
日々忙しく、勉強時間の確保が難しい日も多々ありましたが、準1級という目標があったからこそ、「期日までにここまで覚えよう」「一発合格して受験料を無駄にしたくない」「子供たちに合格証を見せたい」という具体的な動機付けができ、少しずつでも勉強を継続できました。小さな目標であっても、具体的な動機を持つことは非常に重要です。
二つ目は、ネイティブ英語との出会いです。このステージでは、洋書のペーパーバックを楽しめるようになり、特にページをめくる手が止まらないミステリー小説(いわゆるpage turnerと呼ばれる類です)を中心に読み始めました。楽しみながらネイティブ英語に触れたことで、実力が飛躍的に向上したと実感しています。
三つ目は、基礎教材の反復(刷り込み)と新知識の追加(上乗せ)です。ペーパバッグを読む中で、「英頻」で学んだ語法に出会うたびに意識的に復習し、未知の単語に出会えば「ターゲット」時代からの単語ノートに追記していきました。この「刷り込みと上乗せ」の方法が、実力の定着にはとても効果的でした。他に使ったのは英検やTOEICの過去問集だけ。教材を絞り、「刷り込みと上乗せ」にフォーカスしたことが、お金や時間の余裕のない私には合っていたようです。
このアプローチでまずは英検準1級に一発合格。その後、3人目の妊娠を挟みつつ、ブレずに同じ方法をコツコツ続けたことで、1級やTOEIC900点もクリアすることができました。
30代後半からは、大手企業、大学、官公庁など様々な組織で、英語を使うパートや派遣社員として働けるようになりました。
- 時限のある目標設定と明確な動機付け
- ネイティブ英語のインプット
- 基礎教材の刷り込みと新知識の上乗せ
4. ハイパー:英語をツール化
このステージは、私の人生を大きく変えた転換点となりました。単なる「英語学習」から「英語を使って新しい世界に飛び込む」という、まったく異なるフェーズへの進化です。
といっても全て順風満帆だったわけではありません。
実は1級取得やTOEIC 900超えを達成しても、実際の仕事ではどこか物足りなさを感じていました。「英語使用」という募集要件の割には、単なるメール翻訳だったり、中学英語以上のスキルは使う機会が無かったり…。
「英語を使って仕事をしている」と自信が持てる状態ではなく、モヤモヤした思いを抱えていました。
大きな転機は40歳直前。海外進出を目指す中小企業で社内唯一の翻訳担当として働き始めたことです。ここでの経験が、私の英語力と視野を大きく広げ、ハイパーステージへと引き上げてくれたのです。
ポイントは以下の2つです。どちらも海外MBAへの挑戦に直結しましたので、詳しくご紹介したいと思います。
①実践的な英語力の獲得
この中小企業では翻訳すべき資料は無限にありました。その多くが、海外の法規制や政府資料、学術論文など。一定の質が担保された英文を大量にインプットできたことは大きな転機となりました。社内唯一の翻訳者として、Google翻訳の精度も十分でなかった当時、私には大量の文書を高速でアウトプットするスキルが求められました。
この「良質なインプット+高速のアウトプット」というサイクルが、英語での思考力を鍛えてくれました。英語でのロジカルな構成力や効果的な表現力といった言語面だけでなく、その背景にある考え方や文化への理解も深まりました。
自転車もゆっくりペダルを漕ぐより高速で一気に漕ぐ方が乗りこなしやすいのと一緒で、ある程度土台ができれば、高速でサイクルを回すことは非常に有効だと思います。
これこそが、英語で考え、アウトプットするための基盤となり、MBA含め、その後のキャリアに大きく役立っています。
②英語をツールとして新たな扉を開く
(二つ目の説明はちょっと長くなります…。)
その企業は海外とのコミュニケーションの重要性がとても高く、私の業務は単なる英訳・和訳にとどまらず、直接、経営者と議論し、経営戦略や繊細なビジネス交渉などにも関わることが多々ありました。
従業員が50名足らずだったこともあり、派遣社員という身分に拘らず、やる気と実力でどんどん仕事を任せてもらえたのは幸運だったと思います。そのうち、月1回のマネジメント研修にも参加させてもらえるようになりました。
元々これまでの組織でも、パートや派遣という、ある意味、客観的な立場から常にマネジメントを観察しており、マネジメント次第で組織のパフォーマンスが左右されることを実感していました。経営とダイレクトに接する中で、自分の中にあるマネジメントへの強い関心を自覚し始めました。
やがて英語の勉強を兼ねて、興味の赴くまま、古本屋で見つけたドラッカーの原著を読破したり、Courseraで会計や統計の講義を受講したりするようになりました。
特にCourseraでは、欧米の一流大学が提供するコースで、課題をクリアし、最終テストにもパスしたりすることで、「英語で専門知識を習得できる」という自信を持てるようになりました。英語で学ぶ醍醐味を存分に味わったこの経験が、そのうち海外MBAという途方もない夢に繋がったのです。
とは言え、お金も時間も実績もない中での海外MBA挑戦は、あまりに無謀に思え、誰かに相談することさえできませんでした。
マネジメント経験もない非正規社員が海外MBAを取ってどうなるのか?
しかも子供達もそろそろ受験という時期でした。
しかし、ネガティブな考えに囚われていては何も始まりません。
持ち前の楽観主義もあり、タンス預金をはたいて45歳でイギリスのUniversity of Leicesterに出願しました。
結果として、この決断は私の人生を大きく変えました。
国際ビジネスを学んだプロフェッショナルとして、自律的にキャリアを切り拓く自信がついたのです。
さらに嬉しいことに、英語で学ぶ習慣が身についたことで、プログラミングやAI、はたまたサステナビリティなど、新しい分野が登場しても、スムースに英語で知識をインプットできるようになりました。英語で得られる情報は、量・質の面で和文情報の比ではありません。このスキルはキャリアビルディングに絶大な効果がありました。
現在は、プライム企業の上級管理職とソーシャルスタートアップでのパラレルキャリアを満喫しています。いつの間にか、夫の年収も超えていました。
もちろん今も学びを続けており、これからも自分らしいキャリアを形作っていくつもりです。
あの時、自分の心の声に素直に従って良かったと心底思います。
- インプット&アウトプトの量と質を意識的に高める
- 良質な英語素材に大量に触れる
- 正確かつ迅速なアウトプットを心がける
- 英語をツールとして活用し、新しい分野に挑戦する
- 専門分野の知識を英語で学ぶ
- グローバルな視点や価値観を吸収し、キャリアの可能性を広げる
5. まとめ
「英語ができない」「時間がない」「もう遅い」—私も最初はそう思っていました。
この記事を読んでいるあなたも、きっと同じような不安を感じているかもしれません。でも、私のような「普通の専業主婦」でもMBAホルダーになれたのです。
一番お伝えしたいのは、「英語は目的ではなく手段である」ということ。英語を通じて新しい世界が開け、それが更なる成長への扉を開いてくれるのです。
是非、自分の心の声に素直に従ってみてください。自分を信じてステップを一つずつクリアしていけば、必ず道は開けます。
その一歩を踏み出すお手伝いが少しでもできれば、本当に嬉しいです。