MBA出願では通常、審査時にUnofficial Transcript、合格後にOfficial Transcriptを提出します。
日本の成績証明書には、公式/非公式という区別がありませんので、戸惑う方も多いかと思います。
結論から言うと、成績証明書(紙)があればOfficial transcript、Unofficial transcriptに対応可能です。
この記事では、Official transcriptとUnofficial transcriptの違いと日本の成績証明書の扱い方について丁寧に説明します。

1.トランスクリプトとは?
・学業成績を大学が証明する文書
海外MBAの出願に必要な書類は5つありますが、そのうちの一つがTranscriptです。
“Academic record”や”Transcript of record”とも呼ばれ、学業成績を大学が証明してくれる文書です。
・OfficialとUnofficial
海外のTranscriptにはOfficial transcriptとUnofficial transcriptがあります。
両者の違いは「真正性」です。
「真正性」とは、「正当な権限において作成された記録に対し、虚偽入力、書き換え、消去および混同が防止されており、かつ、第三者から見て作成の責任のあること」です1。
通常、出願にはUnofficial transcript、晴れて合格オファーをもらえばOfficial transcriptを提出することになります。
そこでまずは海外でのOfficial transcripとUnofficial transcriptの区別について、ご説明したいと思います。
3. Official transcript
・役割
まずはOfficial Transcriptから…。
海外MBA出願において、Official transcriptと見なされるのは、大学が公的に発行し、真正性が担保された文書のみです。
多くの場合発行は有償です。
発行形式には、①紙ベース、②デジタルの2パターンがあります。
通常、スクールに提出するのは合格通知を受け取ってからになります。
・特徴
Official transcriptには改ざんを防ぎ、機密性を保つ仕組みが必要です。
紙ベースの場合なら、大学名の透かし入りの用紙に印刷され、公印が押されます。
MBA出願においては、下図のように厳封した封筒を別の封筒に梱包して郵送することが求められます。
出願者本人を経由せず、発行元から提出スクールへの直送が要求されるのが一般的です。
後述しますが、日本の大学出身の場合、ほとんどが紙ベースでの対応となります。

デジタルの場合は、タイムスタンプやデジタル署名によりセキュリティが担保されたリンクが、発行大学から提出先のスクールに直送されることになります。

デジタル署名とタイムスタンプ
上記をまとめると以下のようになります。
Official transcriptの特徴
- 発行は有償
- 公印や署名入り
- 改ざん防止の仕組みあり(紙:厳封、デジタル:タイムスタンプやデジタル署名)
- 機密性を保って提出(紙:厳封、デジタル:発行大学からの直送リンクのみOK)
4.Unofficial Transcript
Unofficial transcriptとは、公印や公式署名がなく真正とはみなされないtranscriptのことです。
たとえば、
- 紙のOfficial transcriptのスキャンコピー
- 学生ポータルからダウンロードしたtranscript
などが、Unofficial transcriptとなります。
オンラインMBAでは、出願審査時にはUnofficial transcript → 合格後に改めてOfficial transcriptを提出という流れが一般的です。
ただ、2については出願書類として認めないスクールもあります。
たとえば、University of Southern Californiaは、米国外の出願者については紙ベースしか認めていません2。
志望スクールの要件については、必ずしっかり確認なさることをお勧めします
Unofficial transcriptの特徴
- 公印や署名無し
- 発行機関の作成責任なし
- Unofficialの定義は各校で異なるので要確認
5. 日本の「成績証明書」
・Transcript=成績証明書
一方、日本でTranscriptに相当するのは「成績証明書」です。
日本では、英文のデジタル成績証明書を発行しているのは数校しかありません3。
従って当記事では紙ベースの成績証明書を前提として、ご説明させて頂きます。

これは早稲田大学の成績証明書の英文サンプルで、公式ウェブサイトの「卒業生向け証明書発行」ページから発行申請を行います。

成績証明書の一連の手続きについては、こちらの記事をご覧ください。
・公式/非公式の概念は?
前述の通り、欧米ではtranscriptにつき、Official/Unofficialが区別されており、出願時には”Unofficial”、合格後に”Official”の提出を求めるスクールが多いです。
ところが、日本の「成績証明書」の場合、公式/非公式という概念がそもそもあまり浸透していません。
日本では「成績証明書」と言えば大学が正式に発行する真正な文書を指すケースが殆どで、あえて公式/非公式を区別する必要が無いためだと思われます。
イントロにも記載した通り、日本の成績証明書はOfficial transcriptとしてもUnofficial transcriptとしても使用できます。
以下で少し詳しくご説明します。
6.日本の成績証明書のトリセツ
・Official 兼 Unofficial
日本の成績証明書は、公印や大学名の透かしが施された用紙に印刷されます。
従って、前述のOfficial/Unofficialの概念に従えば、
- スキャンしてPDF化すれば、Unofficial transcript
- 厳封のまま郵送すれば、Official transcript
として、どちらにも使えます。
・郵送 or コンビニで印刷
発行には、2パターンあります。
- 大学からの郵送
- コンビニで出力
1. の場合、下記のような封筒が用いられます。

MBA出願では真正性を保つため、厳封(封函時に封印等を施し、密封性を保つこと)での提出が必要ですので、発行申請時に大学側にその旨を伝えておかれることをお勧めします。
Official transcriptとして郵送する場合は、本人ではなく、発行大学から提出先スクールへの直送が求められるケースが多いです。
つまり大学に提出先スクールの住所を伝え、そこに送付してもらわなければなりません。
海外への直送に対応してもらえない場合の対策についてはこちらの記事をご覧ください。
いずれにしても1通は自分宛に送付してもらい、開封してスキャンし、Unofficial transcriptとして提出できるようになさることをお勧めします。
2.のコンビニ印刷の場合でも、印刷面には電子透かしが入っています。
ところがこの電子透かし入り証明書は、国内の進学や就活などで問題なく通用しますが、海外スクールでは真正とはみなされません。
(ちなみに外務省でも公式文書とは扱ってもらえません。)
つまり、コンビニ出力の成績証明書はOfficial transcriptとしては使えないということになります。
Unofficialとしては使える可能性がありますが、有償なのでわざわざ入手する必要はなさそうです。
従って英文のデジタル証明書を発行してもらえる大学以外では、紙ベースの成績証明書がOfficial transcript、Unofficial transcriptを兼ねるという事になります。
6.まとめ
上記の通り、欧米のTranscriptと日本の「成績証明書」は発行形態に違いがあります。
紙で発行される日本の成績証明書はPDF化すればUnofficial transcriptとして、厳封して郵送すればOfficial transcriptとなります。
多くのスクールが公式サイト上に”Transcript”の専用ページを設けていますので、一度ご覧になってはいかがでしょうか?
*本記事は執筆時点での筆者のリサーチに基づいています。スクールごとの最新情報はスクールウェブサイトでご確認ください。