海外MBAへの挑戦を検討しているWoriking professionalにとって、GPAは出願プロセスにおける重要な要素の一つです。
とは言え、大学卒業後かなり経っている方だとGPAになじみが無い場合も多いと思います。
この記事では、GPAの意義や重要性、またGPAが低い場合の対策方法についても詳細に解説します。

1. GPAとは
GPA(Grade Point Average)は、主に米国で用いられる成績評価指標です。
各科目の成績を数値化し、その平均値を算出します。
米国での一般的な評価基準は以下の通りです。
成績 | 評価点 |
---|---|
A | 4.0 |
B | 3.0 |
C | 2.0 |
D | 1.0 |
F | 0.0 |
多くの大学では、A+やA-などの細分化された評価も導入しており、それぞれに対応する評価点が設定されています。
2. 海外MBA出願におけるGPAの重要性
大学院入学においては、一般的に3.0以上のGPAが求められます。
海外オンラインMBAにおいても、やはり「GPA 3.0以上」を入学要件に含むスクールが多くなっています。
ビジネススクールがGPAを重視する理由には、以下のようなものがあります:
- 学業成績の一貫性:GPAは長期間にわたる学習成果を反映
- 学習能力の指標:高GPAは、ハードなMBAプログラムに耐えうる学習能力を示唆
- 時間管理とコミットメント:高GPAは、効果的な時間管理とコミットメントが必要で、どちらもMBAでの学習に必須です。
- 競争力の指標:他の志願者との比較対照において、選考基準の一つとなります。
一方、スペインのIE、ドイツのESMT Berlin、イギリスのOxford BrookesなどはGPAの数値要件を提示していないスクールもあります。
その場合でも、”GPA will be considered throughout the evaluation process.(IE関係者のコメント)”とされ、やはり審査の対象には含まれます。
3. 日本と海外のGPA計算方法の違い
日本の大学でGPAが導入されたのは2000年前後で、各大学が独自の基準でGPAを運用しています。
ご注意いただきたいのは、日本と海外ではGPA計算方法に違いがあるということです。
日本の多くの大学では、以下のような4段階評価を採用しています。
一方、前述の通り、海外の大学では前述のA~F評価が一般的です。

日本の4段階評価をGPAに単純に置き換える場合は、以下のように計算します1。

4. GPAが低い場合の対策
GPAが低いというだけでMBAへの挑戦を諦める必要はありません。
なぜならMBAの入学審査はホリスティックアプローチという包括的判断に基づいて行われるため、たとえGPAがそれほど高くなくても、公私に亘ってリーダーシップを発揮してきたような人材なら、十分合格の可能性があるからです。
元コロンビアビジネススクールのDeena Maerowitzさんのコメントを引用してみます。
The business school admissions process is really much more comprehensive. … B-schools prefer students who have a history of tackling leadership roles in both their careers and extracurricular activities, …MBA applicants who have led organizations and been civically engaged in their local communities may be able to compensate for a less-than-ideal grade, such as a B- or lower, in a quantitative course. …MBA applicants who are already professionally accomplished and well-connected can help their classmates find jobs, so B-schools strive to admit these types of applicants.
https://www.usnews.com/education/best-graduate-schools/top-business-schools/articles/2018-06-29/you-dont-need-a-stellar-college-gpa-to-get-a-top-mbaから一部抜粋
ご自分のGPAが志望校のGPA要件に不足したとしても、それだけで切り捨てられるわけではありません。
たとえば、以下のような対策を検討してください。
・他の強みを強調する
学業成績以外の強みを示し、自身の価値をアピールすることはとても重要です。
- 職務経験:リーダーシップや成果を強調する
- ソーシャル活動:社会貢献活動やボランティア経験をアピールする
- ネットワーク:信頼できる上司や教授からの強力な推薦を得る
・エッセイで自己アピール
特に出願エッセイは、自身の経験や目標を詳細に説明する絶好の機会です。
- 自分のユニークさを伝え、スクールの多様な価値形成に大きく貢献できることを具体的に述べる
- MBAプログラムが自分の経験やキャリアゴールと強く結びついていることを明確に述べる
・低GPAの理由を説明する
GPAの低さに正当な理由がある場合、それを明確に説明しておくことも大切です。
- GPAは低くても、特に優れた成績の科目があった場合、その科目とキャリアゴールとの関連性を説明する
- 困難な状況(健康問題、家族の事情など)があった場合、それを乗り越えた経験を説明する
・GPA要件の無いスクールを選ぶ
前述のホリスティックアプローチによる包括的審査を行う中で、GPAについて特に下限は設けていないというスクールもあります。
たとえばBabson CollegeではGPA要件がなく、同校のBret Wagner氏は下記のように述べています。
We do not set a minimum GPA and we have a holistic application process looking at all materials.
GPAが低くて心配な方は、こういうスクールを検討することも一つの方法かもしれません。
5. GPAの提出方法
GPAの記載された成績証明書を海外スクールに提出する際には、主に2つのパターンがあります:
・そのまま(読替なし)で提出
前述の通り、日本のGPAは各大学が独自の基準で算出したものですが、多くの欧州のビジネススクールでは、日本の成績証明書をそのまま提出することが可能です。
それをスクールが独自の基準で評価します。
たとえばUniversity of Aberdeenでは、国別の評価方法をウェブサイトで公開してくれています。

・ 第三者機関で読み替えて提出
一方、一部のスクール、特に米国のスクールでは、第三者機関による成績評価の読み替えを求める場合があります。
主な評価機関には以下の3つがあります:
- World Education Services (WES)
- Educational Credential Evaluators (ECE)
- International Education Research Foundation (IERF)
これらの機関は、日本の成績を米国基準のGPAに変換し、公式な評価レポートを発行します。
このプロセスには通常、費用と時間がかかるため、十分な余裕を持って準備することが重要です。
6. GPAに関する誤解と事実
GPAに関しては、いくつかの誤解が存在します。
ここでは、それらを解消し、正確な情報を提供します。
誤解1:GPAが全てを決める
事実:GPAは重要ですが、出願書類の一部に過ぎません。
ビジネススクールは出願書類の全てを勘案して審査する「ホリスティック・アプローチ」を採用しており、志願者の全体像を評価します。
誤解2:GPAが低ければ必ず不合格
事実:GPAが低くても、他の要素で補うことができます。
実際に、GPAが平均以下でも合格している事例は多数存在します。
誤解3:全ての科目のGPAが等しく重要
事実:ビジネススクールは、特に数学や経済学などの定量的科目の成績に注目する傾向があります。
これらの科目で優れた成績を収めることは有利に働きます。
7. GPAに関する国際的な動向
GPAの扱いは、国際的な教育の場で変化しつつあります:
- 欧州では、欧州単位互換制度(ECTS)の導入により、成績評価の標準化が進んでいます。
- 一部のビジネススクールでは、GPAの重要性を相対的に下げ、職務経験やリーダーシップ能力をより重視する傾向が見られます。
- オンラインMBAプログラムの増加に伴い、社会人経験者の評価において、GPAの重要性が相対的に低下している例も見られます。
8. まとめ
GPAは海外MBA出願において重要な要素の一つですが、それだけで合否が決まるわけではありません。
自身の強みを理解し、出願書類全体でそれを効果的にアピールすることが重要です。
GPAが期待値を下回っている場合でも、他の面での卓越性を示すことで、十分に競争力のある出願書類を作成することができます。
最後に、MBAプログラムへの挑戦は単にGPAや数値だけの問題ではなく、自己成長と自律的キャリアへの強い意志を示す機会です。
自分の価値をしっかり理解してもらうため、これまでの経験、目標、そして潜在能力を総合的に伝えるようになさって下さい。
皆様の挑戦が実り多きものとなりますように!
*本記事は執筆時点での筆者のリサーチに基づいています。スクールごとの最新情報はスクールウェブサイトでご確認ください。
- https://educationusa.jp/steps/schedule_supplement.html#step04 ↩︎