海外MBAをオンラインで取得したい!という場合、入学に必要な出願書類は5つあります。
どれも当然英語で提出する必要があり、入手・作成に多少の手間がかかります。
この記事では各書類の目的と作成ポイントをご説明します。スムーズな出願準備に是非お役立て下さい。

1. 入学要件は3つ
・3つの入学要件
まずは入学要件からご説明させて頂きます。が、「そんなの知ってるよ」という方はこちらから読み進めてください。
さてMBAは、ビジネススクールを卒業することで取得できる学位です。
なので当たり前ですが、まずはビジネススクールに入学する必要があります。
入学には以下の3つの要件があります。
- 学士号
- 就業経験
- 十分な英語力
1.の学士号についてはどの学部でも構いません。ただし、最近人気の12-18か月程度で卒業できるAccelerated MBAではビジネス系学部の学位が必要となります。
2. の就業経験は1年~5年とスクールによって様々です。少なくともどのスクールでも、出願者のこれまでのキャリアに多大な関心を寄せています。
3. の英語力としては、IELTS6.0~6.5、TOEFL68~79あたりが必要です。早めに受検し、スコアを入手しておかれることをお勧めします。
2. 出願書類の作成
・5つの出願書類
上記の入学要件を満たしている方は、下記書類を提出することにより、入学審査を受けることが出来ます*。
*GMAT必須、または独自の試験を課するスクール(IE等)については、別途書類が必要です。
・英語で作成
当然ですが全て英語で作成する必要があります。
きちんとした英語であることが望ましく、翻訳サービスを活用する志願者が多いようです。
University of Bradfordでは、Dialexyというイギリスの翻訳サービスを紹介してくれました。
日本の会社が良いという方は、海外出願の翻訳/添削に特化したトップアドミットがお勧めです。

・提出はオンライン
出願書類は全てオンラインで提出します。
(一部、原本の郵送が求められる書類もありますが、それについては後述します。)
出願ポータル(application portal)と呼ばれる出願専用のプラットフォームにアカウント登録すると、自分専用のマイページが作成されます。
出願ポータル上でのオンライン出願については下記の記事をご覧ください。
一度に全てを提出する必要はなく、整った書類から順に提出していくことができますし、提出書類に不備があっても差替えが容易です。
出願ポータルには、たとえばエッセイの制限語数や推薦状の定修方法など、具体的な要件が記載されているケースがあります。
出来るだけ早めにアカウント登録なさることをお勧めします。
・出願者は「カスタマー」
欧米のビジネススクールは出願者を「カスタマー」と考えています。
なので致命的な要件不足は別ですが、多少の要件不足なら、杓子定規に「ダメ」と言われることはまずありません。
これは日本とは大きく異なる点です。欧米スクールはとてもフレキシブルです。
スクールのアドミッションオフィスに問合せれば、要件不足をカバーし、出願に持って行ける方法をなんとか探し出すことは不可能ではありません。
以下では、そのような点も含めて、各書類の目的と作成ポイントを詳しくご紹介します。スムーズな出願にお役立てください。
2-1. 大学の成績証明書(Transcript)
・概要と提出目的
まず一つ目は、大学成績証明書(Transcript)です。
提出の目的は、①過去の学業成績からMBA課程でのパフォーマンスを推測するため、②出願者間での能力比較などに使用するため、と言われています1。
卒業大学に依頼すれば、大概英文で発行してくれると思います。
下記は早稲田の成績証明書です。

重要なのは、右下に赤丸で囲んだGPA(Grade Point Average)という項目です。
ざっくり言えば全履修科目の平均値です。
海外、特に米国では重要な評価指標で、一般的に大学院出願ではGPA3.0以上とされ、オンラインMBAでも同様です。
米国スクールでは、他国の大学のGPAをそのまま受け付けてくれず、専門の評価機関(WESが有名)で米国水準のGPAに読み替えるよう求められることがあります。
一方、欧州では、ドイツのESMT Berlin、イギリスの Oxford Brookes Universityなど、そもそもGPA要件がないスクールもあります。
・日本のGPAは不統一
このGPAという仕組みが、日本の大学に導入されたのは2000年頃からです。
文科省の旗振りではなく、大学の任意判断での導入ですので、未だにGPA未導入の大学もあります。
さらに問題なのは、日本でのGPA算出方法に統一基準が無く、大学によってその取扱いがバラバラな事です。
文科省も「(GPAの)算出方法や運用実態は様々」と言っているくらいの状況です2。
最近の大学生はゼミ選考や就活用にGPAを気にする傾向もありますが、これまでGPAと無関係に過ごしてきた世代にとってはなかなか厄介です。
以下では志望校にGPA要件がある場合について、解説します。
-GPAが足りない場合
いざ母校から成績証明書を取り寄せてみたら、GPAが低く、志望校の下限に届かないということはあり得ます。
だからと言って「MBAは無理」と早々に諦めないでください!
MBAの選考はホリスティックアプローチ(全出願書類から総合的に人物像を評価して行う選考)で実施されます。
GPAが足りなくてもリーダシップスキルに丈けることなどが他の書類で説明出来れば、合格することは十分可能です。
Colombia Business Schoolの元アソシエイト・ディレクター、Deena Maerowitzさんは下記のように仰っています3。
Business schools prefer students who have a history of tackling leadership roles in both their careers and extracurricular activities, partly because those students are likely to be active participants in MBA student clubs. So MBA applicants who have led organizations and been civically engaged in their local communities may be able to compensate for a less-than-ideal grade in a quantitative course.
出所:U.S News and World Reportの記事を改題
GPAが下限に足りないなら、エッセイや履歴書でGPA不足を補うに余りある自らの価値をアピールし、いかにスクールに貢献できるかを伝えるようになさってみてください。
米国スクールへの出願の場合は、WESという他国のGPAを米国基準で読み替えるサービスを使えば、GPAが幾らかアップするという可能性もあります。
ただWESでの読替を推奨するスクールもあれば、禁止するスクールもありますので、必ずご確認なさってください。
-GPAの記載自体がない場合
GPA不足と同様に困るのは、そもそも成績証明書にGPAの記載がない場合です。
GPAが日本で使われ出した2000年頃に既に大学を卒業していた方だとGPAが算出されていません。
下記も早稲田の成績証明書ですが、1990年代の卒業生を想定しており、GPAの記載はありません。

こういった場合もやはり、WESを使ってGPAに換算してもらう方法があります。
またはこのまま提出し、スクール側で読み替えてもらうというケースもあります。
いずれにせよGPAが無い場合、早めにスクールのアドミッションオフィスに問い合わせることをお勧めします。
更に、もし結婚で姓を変更した方で、成績証明書が旧姓でしか発行してもらえなかった場合は、別途対応が必要となります。
詳しくは、是非下記の記事をご覧頂ければと存じます。
-直接スクールに郵送する場合
スクールによっては、封印した紙の成績証明書(Official Transcriptと呼ばれます)を卒業大学から直送するよう求めるところもあります。
出願時には成績証明書をPDF(Unofficial Transcriptと呼ばれます)で提出し、正式に合格オファーを受ける際に、改めてOfficial Transcriptを提出するという場合もあります。
もし卒業大学が直送に対応してくれない場合は、その旨をスクールに説明すれば、本人郵送でもOKという場合もあります。
このように、成績証明書の取り扱いはスクールによってかなりバラツキがあります。
とにかくスクールへの早めの確認・相談が重要です。
・入手のポイント
以上からお分かりいただける通り、成績証明書の提出は一筋縄ではいかない可能性があります。
そこで以下のポイントに留意されることをお勧めします。
- とにかくMBAを検討し始めたら、できるだけ早めに成績証明書を取り寄せる
- 不測の事態に備えて、必要通数より多めに入手しておく
2-2. 履歴書(Resume, CV)
・概要と提出目的
MBAで求められるのはresume、またはCV(curriculum vitae)と呼ばれるものです。
よくMBA resumeは、Sales DocumentsまたはMarketing Documentsと言われます。
つまり淡々と経歴を書くというよりは、自分を売り込むための資料となります。
・作成のポイント
日本の「履歴書」のような定型フォーマットがないため、記載者自身で内容やフォーマットを決める必要があります。
幾つかのパターンがありますが、下記4つの事項を記載するのがシンプルでお勧めです。
- Contact:氏名、連絡先
- Experience:職歴
- Education:学歴
- Additional Information/Personal:上記以外の情報
作成にあたっての主なポイントは下記の通りです。
- スペルミス、文法ミスはご法度
- 正確なデータや情報を1-2ページに簡潔にまとめる
- フォーマット(文書の見た目や構造)を整える
- 業務やスキルの羅列ではなく、何を成し遂げたか、どうリーダーシップを発揮したかをハイライトする
日本の文書では「フォーマット」が意識されないことも多いですが、英語文書では非常に重視されます。
以下にYale Universityの指定するフォーマット例をご紹介しておきますので、宜しければご参考になさって下さい。
- Type font should be Times New Roman with 10 or 11 point type size
- Margins should be no less than 0.5” on each side
- Leave periods off at the end of bullets
出所:Yale University, ”Resume Writing Guide”
また同校は履歴書のテンプレートも配布してくれています。全体のイメージがお分かり頂けると思います。
Yale Universityの履歴書テンプレート(Working Professional用)
2-3. 推薦状(Letter of recommendation)
・概要と提出目的
推薦状はLetter of Recommendation (LOR)、Reference Letterなどと呼ばれます。
第三者による出願人の客観的、かつ定性的な評価を記載した書類です。
提出目的は、エッセイや履歴書に記載された内容が妥当かどうかのバリデーションのためと言われています。
詳しくは下記をご覧ください。
・作成のポイント
推薦状は第三者(多くは仕事上の関係者)に作成してもらうという点で、出願書類の中でも最もセンシティブな書類となります。
推薦者からスクールへの直送を指定される場合もあり、現職の上司には頼みにくいという方もいらっしゃると思います。
このような事情はスクール側も重々理解しており、オンラインMBAの場合、推薦状は未入手でも他の書類が揃っていれば出願可能という柔軟な対応をしてくれるところがほとんどです。
もちろん入手次第の送付が必要ですが、合格オファー後でも良いとするスクールもあります。
ざっくりとした作成ポイントは下記の通りです。
- MBA挑戦を応援してくれる方に依頼する
- 可能な限り、推薦者との事前打ち合わせを行う
- エッセイや履歴書の内容と矛盾しないよう推薦者と擦り合わせる
- 提出手順をよく理解し、計画的に進める
推薦状のお困りごとについては下記をご覧ください。
2-4. エッセイ(Essay, Personal Statement)
・概要と提出目的
日本語では「エッセイ」と総称されていますが、英語ではPersonal Statement、Statement of Purpose (SOP)などとも呼ばれます。
自分の価値と意欲を伝え、入学に値する人材だとアピールするツールです。
スクールはエッセイによって出願者がどのような人物であるかを具体的に知るのです4。
500語、A4で1枚程度が多いですが、スクールによって様式は様々です。
・作成のポイント
自らについて最も自由にアピールできるのがエッセイですが、謙虚を美徳とする日本人は自己アピールが苦手。
どんなことで自分をアピールしたらよいか分からないという方もいらっしゃると思います。
ところが英文のエッセイサンプルを読むと、「こんな些細なことをここまで膨らませるんだ!」と驚かされることがよくあります。
他の出願者のエッセイに埋もれてしまわないためにも、謙虚さを捨て、自分の価値を上手く可視化・アピールしてみましょう。
- 自分の強みや能力、そしてスクールの求める人物像についてよく理解する
- ネットにある英文サンプルを沢山読み、自己アピールのコツをつかむ
- 何度も書き直すことを想定し、早めに草案にとりかかる
- 推薦状との乖離を最小化するため、推薦者に読んで頂く(たとえ草案でもお見せした方が良いと個人的には思います)
エッセイのお困りごとについてはこちらをご覧ください。
2-5. 英語スコア(IELTS, TOEFLなど)
・概要と提出目的
最後は、英語スコアです。
これは英語を母語としない出願者のみに課せられ、MBA課程に適応する英語力があるかどうかの証明のために提出します。」
一般的にはIELTS6.0~6.5、TOEFL68~79くらいが求められています。
DuolingoやVersantでもOKというところも多くなっています。
英語力が下限に達しない場合でも、それだけで諦める必要はありません。
英語でのビジネス経験が豊富な方については、それを証するドキュメント類を提出すれば英語スコアを免除してくれるスクールもあります(University of BradfordのオンラインMBAなど)。
また事前に所定の語学コースを受講する、などの条件付きで入学が許可されることもよくあります。
これはConditional Offerと呼ばれます。
GPAと同様、やはり、アドミッションオフィスへの確認・相談が有効です。
・入手のポイント
英語スコア入手のポイントは以下の通りです。
英語力は高いに越したことはなく、入学後も継続して磨き続けることをお勧めします。
- 英語力の客観評価のためにも早めの受験がお勧め
- テスト機関からのスコア直送を求めるスクールもあるので、計画的な受験が必要
3. 出願書類の提出
・基本はオンライン提出
作成・準備した出願書類は原則、下記のような呼ばれる出願専用のサイトからオンライン提出します。
簡単にアカウント登録が出来ますし、整った書類から順次、アップしていけば良いので、紙ベースの申請より遥かに楽です。

・原本直送が指定される場合も…
一方、スクールによっては成績証明書(トランスクリプト)や英語スコアについて、出願者本人によるPDFのオンライン提出を認めず、発行機関からの原本直送を指定するところもあります。
推薦状についても、紙ベースで推薦者から直送してもらわないといけないケースがあります。
出身大学や推薦者が直送に対応してくれない場合は、
- スクールに事情を相談し、本人が発送する
- 事前の了承を得た上で、出身大学や推薦者を発送人名として、出願者本人が発送手続きをする
といった対処法が考えられます。

いずれも、上記のようにフラップ部に署名/封印など未開封が証明できる状態で別の封筒に密封し、送付することが重要です。
万が一に備えてトラッキングできるEMS、FedEx、DHLなどで発送されるようお勧めします。
4. まとめ
以上の通り、MBA入学に必要な出願書類はどれも手軽に作成できるものではありません。
手順を理解し、計画的にご準備なさることをお勧めします。
*当記事は執筆時点での筆者のリサーチに基づいています。最新情報や詳細については必ずご自身でのご確認をお願いいたします。
- https://www.onlinembacoach.com/rankings/flexible-gpa-requirements/#what-is-a-flexible-gpa-policy ↩︎
- https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/__icsFiles/afieldfile/2018/11/12/1410961_1_1.pdf ↩︎
- https://www.usnews.com/education/best-graduate-schools/top-business-schools/articles/2018-06-29/you-dont-need-a-stellar-college-gpa-to-get-a-top-mba ↩︎
- Top tips for writing your personal statement! | Imperial College Business School ↩︎