MBAは意味ない?人生で意味あるMBAにしたいなら…

MBA出願

海外MBA取得で報奨金1000万円という企業が現れるなど、MBAへの関心がこれまで以上に高まっています。

一方で「MBAなんて意味ない」というネガティブな意見もよく見られます。

この記事では「MBAは意味なし」とする代表的な理由6つを挙げ、何とか意味あるものに転換できないかを探ってみました。


MBAの是非~意味ありvs意味なし

・意味あり派「海外MBAに報奨金1000万」

最近、人的資本経営の流れでリスキリングやリカレント教育への関心が高まり、幅広い層にMBAへの関心が広がっています。

教育訓練給付金も拡充され、多少の投資をしても実になるスキルを身につけたいという学習意欲の高い方々に特に人気のようです。

KADOKAWAが海外MBA取得者への報奨金を1000万円というニュースは、多くのメディアで大きな反響を呼びました。

・意味なし派「日本人にMBAは必要ない」

一方で「MBAなんて意味がない」、そもそも日本人にはMBAは必要ないという意見もあります。

ご自身がMBAホルダーだったり、MBAを取り巻く状況についてよくご存知の方々が主張されていることが多く、どれも説得力があります。

「意味ない」とされる理由はざっくり以下のようなものです。

  1. キャリアへのインパクトが不明
  2. 実務に活かせない
  3. お金・時間がかかる
  4. (日本の場合)MBAへの理解度が低い
  5. (国内・オンラインの場合)ステータスが低い
  6. (40代以上の場合)遅すぎる

・中間派「意味のある/なしは本人次第」

オンラインで海外MBAを取得した筆者としては、つまるところ

MBAが意味あるものになるか、無意味なものになるかは本人次第

と思っています。

どれだけ条件が悪くても、投じたリソースに勝るベネフィットが得られ、本人が「意味あり」と感じればそれは「意味あるMBA」になるのではと思います。

逆に言えば、「意味あるMBAにしよう」という志がなければ、周りを巻き込んでまで挑戦しない方がよいかもしれません。

厳しい言い方かもしれませんが、やはり「意味ない」MBAになるリスクはそれなりに高いからです。

意味あるMBAにするには?

そこで「意味なし」とされる代表的な理由を6つ挙げ、それらを意味あるものに転換するにはどうしたらいいかを考えてみました。

あくまでも試論ですが、ご参考になれば幸いです。

①キャリアへのインパクトが不明

MBAは日本語で言えば「経営学修士」という学位です。

履歴書に書くなら「資格」欄ではなく、「学歴」欄。英文レジュメなら”Education”というセクションです。

特定業務を行える「資格」「ライセンス」ではなく、医師、弁護士のように職業と直結しているわけではありません。

MBAを取得したからと言って、何らかの職業で有利と言う公的な保証はどこにもないのです。

従ってキャリアにどんなインパクトがあるのかは事前に予測できません。

これがMBAを取っても意味がないとされる一つ目の理由です。

意味あり」に転換するには?

目先のキャリアに過大に期待し過ぎない。中長期でのキャリア以外へのインパクトも考える。

筆者の場合、現在のような心地よいパラレルキャリアにたどり着くまで何年もかかりました。「海外MBA=夢のようなキャリアチェンジ」とはならないケースも多いと認識しておかれた方がよいように思います。

②実務に活かせない

MBAは、ビジネス全般にわたる必須事項を体系的に学びます。

言い替えれば、ファイナンス、マーケティングなどの知識を広く薄く身につける、ということです。

特定領域の専門知識やスキルが身に付くわけではありません。

例えば、DCFを使った初歩的なバリュエーションが出来るようになっても、それを直接実務で駆使できる機会のある方は限られています

そもそもMBAで習うのはそれほど高度なバリュエーションではなく、MBAに行かなくても習得できます。

これが「意味なし」とされる2つ目の理由です。

「意味あり」に転換するには

知識は直接生かせなくても、枠に捉われない考え方、ダイバーシティへの寛容性など、MBAで得られるものは他にいくらでもあり、どこかで必ず活かせる。

たとえば冒頭に紹介したKADOKAWAの夏野剛社長(ご自身もUniversity of PennsylvaniaのMBAホルダーです)のコメントも合わせて…。

「MBAは取得までの難易度がかなり高いと想像されますが、(中略)取得までの課程において本気で努力しやり遂げた成功経験を様々な場面で活かしてほしい」

③お金・時間がかかる

コスパ、タイパが悪いというのは「意味ない」説の強力な根拠です。

最近はかなり短期で取得できるMBAも増えてきていますが、卒業まで1-3年かける方が多いようです。

その期間、どれくらいを勉強に費やす必要があるのかというと、海外オンラインなら大体10-20時間/週とされます。

学費はというと、これも海外オンラインを例に挙げると、最安で100万円台、高額なら2000万円台

決して気軽に挑戦できるものではありません。

「意味あり」に転換するには?

人生100年時代1。いくつになっても必要とされる人材となるために投資は惜しまない。仕事との両立が前提のオンラインMBAだと、学習負担は考慮されており、在学中の収入減も回避できる。久々の学生生活も十分満喫したい。

④(日本の場合)MBAへの理解度が低い

日本は欧米ほど学位を重視する社会ではなく2、修士などの高等教育に関する認識は高くないのが現状です。

なので残念ながら、日本全体で見ると、MBAホルダーがゴロゴロいてその価値が適切に認識されている場というのは一部のトップ組織に限られています。

日本国内には360万も会社がありますが、採用担当者や経営陣がMBAを知らない、聞いたことはあっても中身についてはよく知らない、というところが実はかなり多いと思います。

なので、ハーバードやスタンフォードといったトップ校ならいざ知らず、私のように日本で知名度の低いスクールだと「MBAを取得した」と言ってもその価値が対外的に評価されないケースが多々あります。

苦労して「MBA」という肩書を取っても評価されないのなら意味がない…という主張も十分理解できます。

「意味あり」に転換するには?

「MBA」という肩書ではなく、「グレードアップした自分」という商品の価値を言語化し、分かりやすく伝える(場合によっては「売り込む」)。先の夏野社長のコメントにもある通り、価値を生かす場は必ずある。ただ場と自分をマッチングさせる力量は必要

⑤(オンライン/国内MBA)ステータスが低い

オンラインMBAの場合は、「フルタイムMBAより社会的ステータスが低い」という意見があります。

これまでフルタイムMBAの卒業生がビジネス界で確立してきた実績を鑑みると、これは妥当な意見だと思います。

国内MBAへの見方は更に厳しいものがあります。

ほとんどの国内MBAは国際認証が無く、それらをまとめて「自称MBA」と呼ぶ方もいらっしゃいます。

国際的に質が担保されないMBAなんて、わざわざ取得する必要が無いというわけです。

こういったステータスに関する問題も「意味なし説」の根拠です。

「意味あり」に転換するには?

オンラインがフルタイムより低ステータスなのはリソース負担を考えても当たり前。ただ両者の学位上の価値は同じ。オンラインでも履歴書やプロフィールには「MBA」と書くだけでOK。「オンライン取得」と断る必要はない。最低限、国際認証があれば安心して「MBA」と名乗れる。

⑥(40代からの場合)遅すぎる

更に私と同じように40代からのMBAだと、「遅すぎて意味ない」と言われてしまいます。

以前主流だった、「20-30代のトップエリートが社費・公費でMBA」というイメージが刷り込まれているのだと思います。

さらに、日本では社会人教育が欧米ほどには浸透していません3

「そんな年になって勉強しなくても…」「40歳超えて、なんのためにわざわざ勉強するの?」という感覚も働くのだと思います。

「意味あり」に転換するには?

40-50代こそ学びたい。年齢よりむしろ、グロースマインドセットが大切。

内閣府の調査によると、「70~75歳まで働きたい」という方は約3割、「働けるうちはいつまでも」とする方も2割。40-50代なんてまだまだ働き盛り?

何歳まで収入を伴う仕事をしたいか?(回答対象:60歳以上男女)

出所:内閣府「高齢者の経済生活に関する調査結果」

自分らしいキャリアのために

・キャリアは自分で切り拓く

スマホひとつで簡単にビジネスが立ち上げれる時代。「働く」という事に対する社会の認識が大きく変わってきています。

毎日決まった会社に通い、定年まで勤め上げるのが当たり前と思っている人は今どのくらいいるのでしょうか?

自分のキャリアは自分自身で切り拓いて行く時代です。

私は、現在、プライム企業で経営を支えるポジション&海外ソーシャルスタートアップでパラレルキャリアを実現しています。

MBAでの経験が仕事や人生のあちこちで活かされ、選択肢の幅が広がって大いに意味のあるものになっています。

MBAをそのツールとしようと考えるなら、是非、自分の可能性を信じて一歩踏み出してみてはいかがでしょうか?

5年後、10年後、自分らしい働き方をしていたい。

そのためにも今、ちょっと気合いを入れて学ぼう

そう考える方にとっては、MBAは意味のあるものになり得ると思います。

もしこの記事を読んで「海外MBAに挑戦しよう」と思って下さる方が一人でもいれば、本当に嬉しいです。

  1. Gratton, L.(2017), The 100-year Life: Living and Working in an Age of Longevity, Bloomsbury Pub Plc USA ↩︎
  2. 苅谷剛彦(2012)『イギリスの大学・ニッポンの大学』中央公論社 ↩︎
  3. 苅谷剛彦(2012)『アメリカの大学・ニッポンの大学』中央公論社 ↩︎