「働きながら海外MBAを目指したい。でもオンラインMBAは価値が無い?」
そう心配していませんか?
でも実はオンラインでも得られる肩書(正式学位)はフルタイムと全く同じ。
履歴書やLinkedInでも「オンラインMBA」と書く必要はありません。
この記事では、意外と知られていないMBAという「学位」について詳しくご説明します。

1. MBAは万能な「学位」
まずは、「MBAとは?」といった基本的な説明をさせてください。
「そんなこと知ってるよ」という方は読み飛ばして、「2.フルタイムとオンライン」にお進みください。
・MBAは「経営学修士」
MBAは、Master of Business Administrationの略です。
大学院(ビジネススクール)で所定のMBA教育を修了することにより得られる「学位」です。
日本語では一般的に「経営学修士」と訳されます。
MBAには国際認証制度がありますので、国際認証を受けたスクールでの学位であることは重要です。
当記事では国際認証を受けたMBAという前提でご説明していきます。
ちなみに日本の大学の中には、MBA教育としての認証を受けていないにも関わらず、自校の学位を”Master of Business Administration”と英訳し、「自称MBA」と呼ばれるところもあるようです。
国内の国際認証MBAについては以下をご覧ください。
・「資格」や「免許」ではない
誤解している方もいらっしゃるかもしれませんが、MBAは「資格」や「免許」とは違います。
たとえば「医師免許」「弁護士免許」を取得した場合、「医療業務」「法律業務」といった特定業務を独占的に営むことが出来ます。
ところがMBAは、あくまでも一定の教育課程を修了した事を証明する「学位」にしかすぎません。
特定の職業と結びついているわけではないのです。
従って残念ながら、MBAを取得したからと言って、何らかの特定業務や独占業務を行う許可が与えられるわけではありません。
・どの業界でも生かせる「万能性」
ではなぜ、これほどまでMBAが人気なのでしょうか?
MBAの魅力はいったい何なのでしょうか?
それは業界や業種に関わらず、どんなビジネスにも生かすことが出来る万能性です。
大企業でもスタートアップでも、グローバルでもローカルでも、ビジネスの成功の秘訣は「マネジメント」です。
MBAでは、経営全般に必要なマネジメントスキルを体系的に学ぶことが出来ます。
なので、ビジネス系に限らず、エンジニア、コンピュータサイエンティスト、医師など様々なバックグラウンドの学生がMBAに集まってくるのです。
下記はESMT BerlinのオンラインMBAプログラム生の所属業界を示しており、多彩な顔触れが揃っていることが分かります。

・最も大切な「自信」も与えてくれる
更に、米国の人気校Northeastern UniversityのAssistant Vice PresidentであるRobert Towner氏は、こう言っています1。
“… an MBA is meant to build your confidence and business acumen to be successful in any industry or role,”
つまりMBAはどんな業界・ポジションでも役立つビジネススキルはもちろんですが、成功に最も大切な「自信」も与えてくれるのです。
元専業主婦ながらMBAに挑戦した私自身は、MBAの最大の効用はこの「自信」だと思っています。
ちなみに日本人にMBAはいらないと仰る方もおられます。
詳しくは下記記事をご覧ください。
2.フルタイム&オンライン
・フルタイムとオンライン
さて、MBAを取得するには2パターンあります。
- フルタイム(全日制)
- オンライン(パートタイム、リモート)
日本にはオンラインMBAはほとんどありませんが、海外には数えきれないほどのオンラインMBAがあります。
コロナ後は、更にオンラインプログラムは増加しています。
・比較してみると…
フルタイムとオンライン。それぞれに必要なコミットメントを比較してみると、下記の通りかなりの違いがあります。
海外フルタイムMBA vs 海外オンラインMBA
形態 | 現職の扱い | 拠点 | 時間 | 費用 |
海外フルタイムMBA | 退職または休職 | 転居必要 | 固定スケジュール 30-35時間/週* | 学費、生活費など 1千万~ |
海外オンラインMBA | 継続可能 | 転居不要 | 自分のペース 15-20時間/週* | ほぼ学費のみ 2百万~ |
フルタイムの場合、(社費留学の方は別として)現職を退職/休職して挑まなければなりません。
その上、学費は極めて高額で、海外での生活費もかかります。
授業参加、予習・復習などのためのタイム・コミットメントも相当なボリュームです。
一方、オンラインMBAはそもそもWorking Professionalのためのプログラム。
仕事・プライベートにもバランスよくコミットしながら学べるように設計されています。
費用もフルタイムと比較すると相当リーズナブル。
現職からの収入をキープしながら学べるため、精神衛生上にもかなりマシです。
更にオンラインはフルタイムと比較して、入学が比較的容易といえます。

・実は学位としては同じ
…とこれだけの差があるのに、実はフルタイムでもオンラインでも得られる学位は同じなのです。
(ようやく本題です。お待たせしました)
どちらも学位は、”Master of Business Administration”となります。
MBAランキングなどで有名な米国のFortuneでは、以下のように書かれています1。
Full-time and part-time MBA programs offer the same degree and the same quality of education. The curricula are usually the same at schools that offer both programs.
part-time MBA というのは、フルタイム以外のMBAプログラムを指し、例えば、オンラインMBA、平日夜だけのイブニングMBA、Executive MBAなどがあります。
どのMBAプログラムでも教育の質は同じとされており、学位の価値も全く同じなのです。
下記はフルタイムMBAでトップクラスのUniversity of Michigan(Michigan Ross)のオンラインMBAについてのFAQです。
University of MichiganのオンラインMBAについてのFAQ

「(オンラインMBAでの)学位表記はどうなるか?」という質問に対し、”Masters in Business Administoration”となる旨が書かれています。
これはフルタイムMBAと全く同一の表記です。
つまりオンラインで取得した学位であっても”by online”といった補記がつくわけではありません。
教育の質は同等という前提があるため、学位名からオンラインかフルタイムかの区別はつかないようになっています。
3.卒業証書
たとえば卒業証書を見てみましょう。

この写真は、私がUniversity of Leicesterから授与されたオンラインMBAの卒業証書です。
(上手な写真じゃなくて申し訳ありません…。)
学位欄は、”Master of Business Administration”となっています。
これが私の取得した学位の正式名です。
” by online”などといった付記がないのがお分かり頂けると思います。
繰り返しお伝えしている通り、カリキュラムや教育の質は同じとされているからです。
ちなみに卒業式での扱いも同じで、オンライン学生もキャンパスでの卒業証書授与式に出席することができます。
私のオンラインMBAの友人達の中には、家族を伴ってGraduation Ceremonyの晴れ舞台を堪能した人が何人かいます。

私は現地参加しませんでしたので、上記の卒業証書は2週間後くらいに郵便で送られてきました。
かなりあっさりとした「卒業」でした。
4.履歴書やプロフィール
・「オンライン」と書く必要はない
さて次に、履歴書を見てみましょう。
上述の通り、MBAは「免許」や「資格」ではありませんので、履歴書に記載する際は、「免許・資格欄」ではなく、「学歴欄」となります。
たとえば、
20XX年 英国レスター大学大学院 MBA(経営学修士)
などと書いたりします。
プロフィールも同じです。たとえばLinkedIn などだと、
SAKURA HINOMOTO, MBA
などとラストネームの直後に「MBA」を付しているのをよく見かけます。
いずれにしても「オンライン」と書く必要はありません。
5. キャリア上の評価は?
・希少性が決め手
「学位上は同等」といっても気になるのが、キャリア上での評価。
日本の企業はオンラインMBAというキャリアをどう見ているのでしょうか?
アメリカのGMAC(GMATの実施機関)によると、フルタイムMBAとオンラインMBAを同価値とみなすリクルーターの割合は、アメリカで21%、アジアでは71%~90%となっています。

これはアジアにはまだまだ国際認証MBAホルダーが少なく、企業側にMBAの知見がそれほど蓄積されていないことと関係があるのかもしれません。
こういったデータや私の個人的な感覚で申し上げると、企業からの評価は「社内でのMBAホルダーの希少性」で二つに分かれると思います。
①MBAホルダーの希少性が低い企業
MBAホルダーの希少性が低い企業とは、社費派遣や中途採用でMBAホルダーが多い企業です。
たとえば金融、コンサル、IT、医薬、外資系。スタートアップ界隈にもMBAホルダーが沢山いらっしゃいます。
こういった環境では、たとえ学位としては同価値だとしても、入学難易度が低く、またコミット度が低めのオンラインMBAをフルタイムと同等に評価してもらうのは、実際のところかなり難しいのが現実だと思われます。
②MBAホルダーの希少性が高い企業
一方、MBAホルダーの希少性が高い企業も多く存在します。
数で言えば、圧倒的にこちらのカテゴリーの企業の方が多いと思います。
私自身、プライム企業に所属していますが、会社としても業界としてもMBAホルダーは珍しく、希少性はかなり高いです。
社内にMBAやMBAホルダーについての知見をお持ちの方はほとんどおらず、「MBA」という肩書以外に、たとえばオンライン/フルタイムの別、スクール名等を聞かれたことはありません(私が自分からMBAの話を持ち出さない精もあるかもしれませんが…)。
こういった企業では「MBA」という肩書のみで大づかみに評価される傾向が強いように感じます。
ちなみにヘッドハンターや転職エージェントの方々にも「MBAをお持ちなんですね」と言われることはあっても、それ以上突っ込まれたことは一度もありません。
6. オンラインはお得?
・オンラインのコスパ
こうして見ると、オンラインMBAは学位上も履歴書上もフルタイムと遜色ない割に、コスパが相当良いため、断然お得なようにも思われます。
ただ実際は、「MBA」という肩書だけで思い通りのキャリアが叶うわけではありません。
MBAで何を得たか、それをどう価値に結び付けるか、そしてそれをどう伝えるか、によってその後の展開は大きく変わります。
要は、本人次第なのだと思います。
自分の価値を発揮できる場所を見つける。これはフルタイムでもオンラインでも変わらないのではないでしょうか。
・是非、働きながらMBAを!
最近は「働きながらMBA」への評価が高まっており、「オンラインだからキャリアに不利」という見方は古いものとなりつつあります。
是非、日本にいたまま海外MBAという強力な武器を手に入れ、グローバルなキャリアを切り拓いていってください。
*本記事の内容は、あくまでも執筆時点での筆者のリサーチに基づいています。各校の最新情報は必ず、スクールのウェブサイトでチェックなさってください。